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- 鹿
- 馬
- めん羊・山羊
- 豚
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- その他・家きん
- 蜜蜂
- その他・家畜
対象家畜 : 豚、いのしし
1. 原因
原因はDNA型ウイルスのヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、アルファヘルペスウイルス亜科(Alphaherpesvirinae)、バリセロウイルス属(Varicellovirus)、の豚アルファヘルペスウイルス1(Varicellovirus suidalpha1) で、ゲノムは約143 kbpの線状二本鎖DNAで1対の倒置反復配列がある。抗原的には単一で血清型はなく遺伝子型もないが、制限酵素による切断ゲノムに多型性がみられ、大まかな遺伝子型別に利用される。
2. 疫学
豚が宿主であるが、牛や山羊等反芻家畜の他、犬や猫等にも感染する。豚では潜伏感染が成立し、ウイルスは容易に検出されなくなるものの感染豚から生涯消失することはない。潜伏感染豚に妊娠や輸送等でストレスが加わるとウイルスの再活性化が起こり、感染源となる。豚及び豚以外の動物への感染は感染源との接触や摂取により成立する。
3. 臨床症状
妊娠豚に感染すると母豚はほとんど無症状に経過するが、胎児は死流産する。また、生後1週間までの新生豚に感染すると神経症状を呈してほぼ100%死亡する。豚の加齢に伴い死亡率は減少し、2週齢では50%、3週齢では25%と1週間毎に半減していく。しかし、初感染の場合は週齢・月齢にかかわらず発熱や食欲不振など元気消失の兆候が少なからずみられる。豚以外の動物では感染しにくいものの、感染すると掻痒を呈して100%死亡する。
4. 病理学的変化
特徴的な病理学的変化はみられず、肉眼的病変としてはわからない。神経症状を呈して死亡した動物では非化膿性脳脊髄炎像が顕著にみられる。組織学的には神経の病変部や扁桃、呼吸器官においてウイルス増殖の証しとして好酸性核内封入体がみられる。
5. 病原学的検査
発症動物、死亡動物からのウイルス分離は容易である。それら動物の鼻汁スワブ、扁桃や脳乳剤等を分離材料とし、豚をはじめ種々の動物由来の培養細胞に接種する。ただし、ウイルス血症を起こさないために血液からのウイルス分離はできない。接種半日から1日で明瞭な細胞変性効果を伴って増殖してくる。潜伏感染豚からのウイルス分離はほぼ不可能である。PCRによるゲノム遺伝子の検出も可能ではあるが、GC含量が多いため増幅は困難である。
6. 抗体検査
ラテックス凝集反応及びELISAによる抗体検出キットが市販されている。ELISAにはウイルス抗体の有無を調べるものの他、野外感染抗体とワクチン抗体とを識別する目的のものがある。中和試験も行われ、市販キットと異なり抗体の定量が可能である。また血清を被検体とする間接蛍光抗体法は定量こそできないが特異性の高い方法である。
7. 予防・治療
予防にはワクチンが使用されるが、ワクチン使用を含め本病防疫に関してはオーエスキー病防疫対策要領に従う必要があり、市町村単位で清浄地域、準清浄地域、清浄化推進地域の3地域に区分し防疫が進められている。使用可能なワクチンは識別マーカー(糖蛋白質欠損)をもち、かつ、抗体識別キットが利用・有効であるものとされている。
8. 発生情報
9. 参考情報
- 獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
- オーエスキー病の防疫対策等について(参考) : 家畜衛生週報、No.2931、373、2006
編集 : 動物衛生研究部門
(令和6年11月 更新)