動物衛生研究部門

家畜の監視伝染病タイトル

豚水疱疹 (vesicular exanthema of swine)

  • 鹿
  • めん羊・山羊
  • その他・家きん
  • 蜜蜂
  • その他・家畜

対象家畜 : 豚、いのしし

1. 原因

起因病原体はカリシウイルス科(Caliciviridae)、Vesivirusに属する豚水疱疹ウイルス(Vesicular Exanthema Virus)。ゲノムはプラス1本鎖のRNAで、粒子の直径は約35~39nmである。ウイルス粒子を構成するカプソメアにカップ様のくぼみがみられ、ラテン語でコップを意味するcalixから命名された。

2. 疫学

本病は、米国における1932年から1959年の25年間と1955年にアイスランドで発生したのみで、他の発生は認められていない。本ウイルスはサンミゲルアシカウイルスに類似しており、アシカ等海獣の肉を飼料として豚に給与したことが発生原因と考えられる。伝播は接触あるいは汚染飼料の給与による。

3. 臨床症状

本ウイルスに起因する豚水疱疹は臨床症状が家畜の最重要疾病である口蹄疫に著しく類似していることにより、届出伝染病に指定されている。症状は、発熱、水疱形成であり、水疱は口唇部、鼻鏡、舌、蹄部などに好発する。本ウイルスは家畜では豚のみに感染する。

4. 病理学的変化

鼻鏡部、口唇、舌、口腔粘膜、蹄部、指趾間、蹄冠部に水疱形成が認められる。水疱はすぐに破れて糜爛となるが痂皮を形成し痕跡が長期間残る。

5. 病原学的検査

発病豚の水疱上皮や水疱液を診断材料とし、豚由来細胞およびVero細胞へ接種を行う。本ウイルスは形態学的に特徴があるので、電子顕微鏡によりウイルス粒子を確認する。また既知の血清型に対する抗血清を用いて蛍光抗体法により同定を行う。本病は口蹄疫類似疾病なので、本病が発生した場合「「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」(令和2年7月1日農林水産大臣公表。令和3年10月1日一部変更。)」に準じて防疫措置が実施される。

6. 抗体検査

血清学的診断はプラック減少法による中和試験により、中和抗体を検出することにより実施する。

7. 予防・治療

本病が残飯給与により伝播したことから、殺処分および残飯給与の停止により、米国で撲滅に成功した。海獣(アシカ等)は現在も豚水疱疹ウイルスを保有している可能性があるので、出来るだけ豚と接触させないようにする。

8. 発生情報

監視伝染病の発生状況(農林水産省)

9. 参考情報

獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)


編集 : 動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)