動物衛生研究部門

豚コレラ

まえがき

豚熱は昭和44年(1969年)に実用化された豚熱生ワクチンによって激減しました。その後、ワクチン未接種豚に発生がみられたものの、平成4年(1992年)の発生をもってわが国からは豚熱はみられなくなり、平成8年(1996年)からは5ヶ年計画で「豚熱撲滅体制確立対策事業」によって自衛防疫によるワクチン接種の中止が図られました。しかしながら、一部生産者からのワクチンの使用継続の要望が強く、都道府県知事の許可による使用が引き続き認められてきました。過去、ワクチン接種によって豚熱の防疫に功を奏した経験を持った生産者からすれば、安心のために使用を望むことは理解できることですが、集団免疫という理論を持って使用するワクチンには一部使用という概念は存在しません。しかも生ワクチンには病原性復帰の問題も付きまといます。実際、一昨年(2004年3~9月)に起こった鹿児島県での豚熱疑似患畜事例では使用していた生ワクチンからの病原性復帰ではなかったものの、おそらくは正規のワクチン製造工程から逸脱した軽度な病原性復帰ワクチンウイルスが原因とされています。 「豚熱に関する特定家畜伝染病防疫指針」により、今後は自衛防疫としての豚熱ワクチンの使用は事実上禁止されることとなります。国家防疫として緊急ワクチンの使用のみが可能ですが、わが国への侵入防止や国内の監視体制を今まで以上に強化し、万一の発生に備え被害を最小限に食い止めるための防疫体制が重要です。防疫の基本は早期発見、早期対応です。そのために豚熱という病気を今一度理解し直すことが重要と考えました。