染色体断片置換系統群を用いることで、コシヒカリとIR64(左端2列)の種子形状の違いに関わる多数の遺伝子が存在することを明らかにしました(Nagata et al. 2015 Breed Sci. 65)。
次世代作物開発研究センターが目標として掲げる先導的な水稲品種を育成するためには、従来からある育種方法の充実のみならず、飛躍的な改良効果が見込める新しい遺伝子素材の導入や、年月を要する育種選抜の効率化が重要な課題となります。農研機構がこれまでに培ってきたイネゲノム情報はこのような場面で大きく貢献すると期待されます。
稲形質評価ユニットでは、稲作の低コスト化に繋がる耐病性や収量性、コメの高機能・高付加価値に繋がる玄米・炊飯米の品質に関係する農業形質等を対象にして、世界各地に分布する多様な稲遺伝資源から水稲育種に活用できる有用な遺伝子素材を探索しています。そしてイネゲノム情報と最新の分子生物学的手法を用いてこれら遺伝子の機能を明らかにするとともに、育種選抜用のDNAマーカーを開発しています。また、このような研究を進める際に威力を発揮する世界に類のない実験系統群(染色体断片置換系統群)を開発し、効果の小さいあるいは環境影響を受けやすい遺伝変異に関わる多数の遺伝子群を高精度で網羅的に検出する新しい手法の開発を行っています。
このような研究開発に加えて、これまでに明らかになった有用遺伝子の育種への活用やDNAマーカー選抜技術の普及においても稲形質評価ユニットは重要な役割を担っています。ゲノム育種推進室と連携して、開発したDNAマーカー情報あるいは国内外で明らかになる様々な品種のゲノム塩基配列情報を積極的に活用し、農研機構内部あるいは地域の水稲育種の効率化に向けたゲノム育種基盤の整備と育種選抜支援を行っています。