
脳・腸・皮膚相関と乳製品
現代社会におけるストレスは様々な疾病や国民の生活の質(QOL)低下の原因となっており、ストレス軽減による健康寿命の延長と医療費の抑制は喫緊の課題です。また、一方で国内の畜産・酪農業や地域の食品産業振興のためには、畜産物の高付加価値化による消費拡大を図ることが重要です。脳・腸・皮膚は神経系や内分泌系を介して機能的に密接に関連していることが知られています。脳に与えられた精神的ストレスは腸・皮膚に伝達され、腸疾患・皮膚疾患の原因となったり、その症状を悪化させたりすることが知られています。逆に、これらの腸や皮膚の感覚異常や炎症などの症状は脳に伝達され、ストレス症状をさらに悪化させます。また、腸内細菌叢は腸管上皮細胞を介して脳と腸の相互作用に影響を与えることから、近年になって、脳-腸-皮膚-腸内細菌という概念が提唱されています。畜産物機能ユニットでは、腸内代謝物や腸内菌叢の解析を行い、脳-腸-皮膚-腸内細菌の相互作用を活用した畜産物の健康機能性を評価するための新たな技術を開発します。これらの評価系や、乳製品の製造において重要な役割を果たしている乳酸菌のゲノム情報を用いて、QOLの向上(ストレス軽減作用や抗老化作用・生活習慣病改善作用等)に有用な乳製品や乳酸菌の機能性成分を解明し、畜産物の高付加価値化技術を開発します。