農村工学研究部門

農村工学研究部門メールマガジン

メールマガジン第38号(2013年5月号)

目 次

1)トピックス
■地震災害地に職員を派遣 ~兵庫県淡路島~
■宮城県と農工研とのパートナーシップ協定に係る技術相談会の開催
2)水土里のささやき
■パイプラインを利用した夜間かんがい実証試験
3)最新の「農工研ニュース」より
■地下ダムの貯水量および硝酸性窒素濃度を予測するモデル
4)ズームイン
■米オクラホマ州で大規模竜巻
5)研究ウォッチ
■住民参加による地域づくりを支援するためのGIS活用手法
6)こんにちは農業農村
■マダガスカルの農業情勢
■日本の棚田百選 ~久留米木(くるめき)棚田へふたたび往訪~
7)農村の草花
■暑さの到来とともに藪の中に咲く八重咲きは憂いを忘れさせる花 ~ヤブカンゾウ~
8)研究者の横顔
■中矢 哲朗(なかや てつろう)

 

1)トピックス

■地震災害地に職員を派遣 ~兵庫県淡路島~
4月14日に農水省農村振興局防災課から当所に対して、前日の兵庫県淡路島内を震源とする最大震度6弱地震の発生に伴うため池の被災調査を行うため、技術支援の要請が入りました。翌15日に、施設工学研究領域構造担当の田頭秀和主任研究員と広域防災担当の正田大輔研究員を現地に派遣し、今後の対応について助言しました。

企画管理部 防災研究調整役 鈴木 尚登


(関連資料)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/38/01-01.pdf

 

■宮城県と農工研とのパートナーシップ協定に係る技術相談会の開催
5月7日に当所において標記の技術相談会が開催されました。この相談会は、宮城県と農工研との間で平成24年6月13日に締結されたパートナーシップ協定の趣旨に沿って企画されたもので、今回で3回目の開催となります。

当日は、宮城県から提示された技術相談テーマに対して、今後の対応方針などについて話し合いました。

企画管理部 企画チーム長 亀山幸司

(会議の模様)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/38/01-02.pdf
 

2)水土里のささやき

■パイプラインを利用した夜間かんがい実証試験
北陸農政局 九頭竜川下流農業水利事業所
調査設計課 大塚直輝 様

当事業所では、平成11年度から福井県の福井・坂井平野において、農業用水路のパイプライン化事業を実施しています。その一部が供用を開始し、約6,500haの農地(全受益面積約11,642haの約56%)にパイプラインを通して水が届けられるようになったところです。

近年、夏季の高温で米の等級が著しく低下する事例が発生しています。そのため、九頭竜川の良質で冷たい水がパイプラインで水田に送水されるようになると、水田の温度上昇が抑制されて米の品質向上につながると、地元はその効果に大きな期待を寄せています。
ここでは、当事業所の実証的な取り組みをご紹介します。


(関連資料)
(1)良質で冷たい水を利用した農業振興の取組み
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/38/02-01.pdf
(2)関連論文(農業農村工学会誌)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/38/02-02.pdf

 

 3)最新の「農工研ニュース」より

■地下ダムの貯水量・水質の変化を再現し、予測するモデル

多孔質で透水性の高い琉球石灰岩が広く分布する南西諸島では、農業用水源の開発のために地下ダムが建設されており、適正な管理の下に良好な水質が保たれています。

一方で、地下ダムの貯水量や水質は、将来予測される気候変動や土地利用変更などによる影響を受ける可能性があります。これらの影響を定量的に評価しておくことは良好な水質を維持するために有効です。ここでは、これらの変化を予測するために開発したモデルについてご紹介します。

資源循環工学研究領域 水資源工学担当研究員 吉本周平

(関連資料)
(1)農工研ニュース第84号
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/38/03-01.pdf
(2)この研究成果をもっと深く理解するための4つのQ&A
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/38/03-02.pdf
 

 4)ズームイン

■米オクラホマ州で大規模竜巻

5月20日に、米オクラホマ州で大規模な竜巻が発生し、多くの方が犠牲になった他、建物が倒壊するなど甚大な被害が出た模様です。アメリカ気象局は、竜巻の強さが6段階中最大の「EF5」(風速約秒速90メートル以上)に相当したとの見方を示しています。

EF(改良フジタスケール)とは、被害の大きさから竜巻を強度別に分類する等級で、1971年にシカゴ大学の藤田哲也博士が提唱した藤田スケールF(関連資料参照)の改良版です。現在アメリカでは、竜巻の規模を表す単位にEFが使用されています。

日本では、約1年前の5月6日にF3クラスの竜巻が発生し、茨城県南西部及び栃木県南東部において大きな被害をもたらしたことは記憶に新しいところです。我が国では、竜巻や台風による気象災害が増加する傾向にあり、農工研では、農業施設の骨組みに与える風圧力の影響を解析し、その対策を開発する研究を行っています。

農地基盤工学研究領域 農業施設工学担当主任研究員 森山英樹

(関連資料)
(1)藤田スケールとは
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/38/04-01.pdf
(2)2012年5月6日の竜巻によって被災したパイプハウスの実態調査【研究発表ポスター】
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/38/04-02.pdf
(3)農工研メルマガ26号から
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/38/04-03.html

 

 5)研究ウォッチ

■住民参加による地域づくりを支援するためのGIS活用手法

活力ある農業農村の再生を図るうえで「住民参加による地域づくり」は欠かせません。しかしながら、実際に地域住民の皆さんが独力で農村活性化構想や農村振興計画を作成しようとすると、地域資源のとらえ方、その評価の仕方、評価した内容の活かし方などなど、普段の生活ではあまりなじみのない作業が待ち構えていて、そうそう簡単に取り組むことは難しいものです。こうして多くの農山村地域では「住民参加の地域づくり」が立ち行かなくなっています。

私たちは、こうした「住民参加による地域づくり」の抱えている難題を克服する支援技術の開発に取り組んでいます。その一つとして、これまで研究分野や設計技術分野などで高度な解析やシミュレーションのためのツールとして活用されていたGISを、住民参加の支援技術として活用する手法を開発し、山梨県甲府市帯那地区の住民参加による農村活性化ビジョンづくりや自主防災計画づくりにおいて実践しているところです。

以下の資料で、その実践内容を紹介させていただきます。

(関連資料)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/38/05-01.pdf

 

 6)こんにちは農業農村

■マダガスカルの農業情勢
農研機構フェロー 藤森新作 様

マダガスカルの人々の主食はコメであり、年間消費量は一人当り約120kg(日本人の2倍)です。コメの生産量はサイクロンなどの影響で大きく変動し、10a当たりの生産量は約200kgと少ないのが現状で、これらの倍増が国家目標となっています。JICAでは、同国で「中央高地コメ生産性向上プロジェクト」を実施しております。

水管理短期専門家としてJICAから要請を受け、2012年12月から2ヶ月間、同国で「ブロックローテーションに基づいた配水システムの構築」を検討して参りました。アフリカ沖のインド洋に浮かぶマダガスカルの生活、農業情勢、活動状況を報告いたします。

(関連資料)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/38/06-01.pdf

 

■日本の棚田百選 ~久留米木(くるめき)棚田へふたたび往訪~

棚田とは、先人が山や谷を切り開き、石垣を積み上げ、傾斜地に作られた田んぼです。上流側の棚田より取水し、それを導き、田越しでかんがいする方式が一般的です。これに要する労力や費用は膨大であり、棚田は先人たちの知恵と苦労の結晶といえます。

1999年7月に、農林水産省が日本全国の117市町村、134地区の棚田を「日本の棚田百選」に認定しました。昨年私は、この内の一つの、静岡県にある棚田に収穫時期に訪れました。今回、田植えの準備の時期に再度訪れ、この歴史的な遺産が今どのように維持管理されているかを調べてきました。

技術移転センター 移転推進室長 寺村伸一

(今年の調査結果)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/38/06-02.pdf
(昨年の調査結果)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/31/06-01.pdf
(関連URL:日本の棚田百選)
http://blowinthewind.net/tanada/100sen.htm

 

 7)農村の草花

■暑さの到来とともに藪の中に咲く八重咲きは憂いを忘れさせる花 ~ヤブカンゾウ~

まだ三寒四温が続いている地方もありますが、そろそろ気温や湿度も上がってくる季節となってきました。蒸し暑さが募ってくる中、草むらにオレンジ色の八重咲きのヤブカンゾウの花が目立つようになります。このヤブカンゾウ、中国では憂いを忘れさせる草と呼ばれることを知っていましたか。

農村基盤研究領域 資源評価担当主任研究員 嶺田拓也

(関連資料)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/38/07-01.pdf

 

 8)研究者の横顔

■中矢 哲朗(なかや てつろう)

中矢さんは、約2年の長期にわたりスマトラ沖津波災害の復旧・復興の研究に携わった経験を活かし、東日本大震災で津波被害を受けた農地の復興や、防災・減災に関する技術の研究開発に取り組んでいます。中矢さんは、強くてしなやかな国づくりを支える気鋭の若手研究者のお一人です。
(他己紹介 水間啓慈)

(自己紹介)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/38/08-01.pdf

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