担当者名:福田直子・牛尾亜由子・川勝(池田)恭子
研究テーマについて
トルコギキョウは北米大陸中南部の比較的乾燥した地域が原産です。紫色で一重の野生種を元にわが国で育種が進み、八重やフリンジ、小輪や大輪の花形、白や薄紫、ピンク色、あんず色等幅広い色彩、花弁の縁が地色と異なる「覆輪」や、霧吹き状、かすり状の模様等の多様な花色の品種が育成されました。
トルコギキョウはバラ等よりも花持ちが良いことや、高級な質感で大輪の八重品種が開発されたこと等から、結婚式などの業務需要も増加して、現在はキク、バラ、ユリ、カーネーションに次ぐ生産額の主要な切り花に成長しました。また、他の主要切り花の品種開発が、主に海外の種苗会社によって行われているのに対して、トルコギキョウは世界的にみて、我が国の種苗会社が新品種の開発や種苗の生産の主導権を握っている貴重な品目となっています。
トルコギキョウの月別入荷量と単価
2005年東京都中央卸売市場統計値より作成
多様な花色、花型のトルコギキョウ
トルコギキョウは育苗に約2ヶ月間、圃場に定植してから切り花として出荷するまでに3~6ヶ月を要します。栽培に最も無理のない季咲きの作型は冬に播種して早春に定植し夏に開花させる方法です。6月から9月の生産量は多いのですが冬は少なく、例えば1月の市場入荷量は8月の約7分の1に過ぎません。需要は年間を通じて形成されつつあるのに、冬は供給量が少ないために高値となっています。切り花が主要品目として成長し定 着するには、年間を通じて一定以上の品質の切り花が安定的に供給される必要があります。そういう意味ではトルコギキョウは周年安定栽培技術が未確立であり、発展途上にあると言えます。
トルコギキョウを冬に出荷するには、夏に播種して初秋に定植し冬に開花させることになります。高温や長日条件で開花が促進される「夏の花」の性質を持つトルコギキョウを、低温短日条件で開花させるため、課題が多く残されています。私たちは、トルコギキョウの周年安定生産の阻害要因を解明し、対策技術を開発することを目的として研究を進めます。研究の対象とする生産阻害要因として、蕾が生長を止めて死ぬ「ブラスチング」 と、覆輪模様が本来の形状にならず着色部位が不定形に拡大する「覆輪の色流れ」を取り上げています。「ブラスチング」も「覆輪の色流れ」も冬に多発する点で共通しており、トルコギキョウが周年安定供給可能な主要切り花に成長する上で解決が必要な課題と考えています。
ブラスチングした蕾と多発個体
正常な覆輪(左)と「色流れ」覆輪の花