2025年11月15日(土曜日)に、「食と農のサイエンスカフェ in 善通寺」を開催しました。
この企画は、食や農の科学についてお茶を飲みながら研究者と気軽に語り合う場として西日本農業研究センターでは2012年から開催しており、コロナ禍の中断を経て久しぶりの開催となりましたが、今回で18回目を迎えました。
今回の話題提供者は研究推進部農業技術コミュニケーターの森末文徳、ファシリテーターは研究推進部技術適用研究チームの志村もと子が務めました。
今回のテーマは「甘くて美味しいミカンを育てる~NAROシールディング・マルチ栽培~」で、カンキツの種類や歴史、栽培や品種改良の概要、農研機構が開発した「NAROシールディング・マルチ栽培」技術についての紹介を行いました。
講義では、この時期に入手可能な中晩生のカンキツを実際に見て・触れて、糖度・酸度測定や試食をしました。私達がよく口にする「うんしゅうみかん」は種子ができないため、「枝変わり(突然変異)」の枝を見つけて品種改良せざるを得ないこと、種子ができる中晩生かんきつ類では、種子を播いて食卓に届くまで20年を超える年月が必要なこと、また近年では、光センサーの導入により糖度の揃った商品が食卓に届いていること、このほか、お店で売られているミカンの中からより美味しいミカンを選ぶ方法などをお話しし、クイズも交えて研究者と参加者が交流を行いました。
また、カンキツの甘さに影響を及ぼす樹体の根域の水分調節については、これまでマルチシートとドリップかん水を組み合わせた「マルドリ栽培」が導入されてきましたが、近年多発している局地的大雨(ゲリラ豪雨)による根域への地下水の過剰な流入も抑える必要があるため、農研機構が開発した地面に垂直に設置するシールディング・マルチについても紹介しました。
参加者からは積極的に質問が寄せられ、美味しいカンキツを育てる方法などについて理解を深めていただきました。講義の後にミカン畑の見学も行きました。剪定の方法やどの枝に実っているミカンが美味しいのかなどの質問も寄せられ、もぎたてのミカンの味の比較をしました。参加者の中にはお子様がミカン農家になりたいとおっしゃっているご家族もおられ、真剣にメモを取る学生の姿が印象的でした。
終了後のアンケートでは、説明が「わかりやすかった」、「よかった」「具体的な講演でありがたかった」との感想が寄せられ、美味しいミカンができる理由などの科学的な話があったことから「学校でも必須授業になって欲しい」「農研機構には、これからも誰でも着手しやすく面白い工夫を考えて欲しい」などの意見をいただきました。
農研機構はこれからも、生産者や消費者の皆さまにお役に立てる技術開発や品種の改良を進め、開発した技術・品種の普及を進めていきます。今後も「食と農のサイエンスカフェ」などを開催して、皆様に農業の面白さや最新技術をご紹介していきたいと考えています。