プレスリリース
交雑育種によるカーネーションの花持ち性の向上

情報公開日:2005年4月 7日 (木曜日)

要約

遺伝的に優れた花持ち性を有するカーネーション品種「つくば1号」、「つくば2号」(仮称)を育成しました。両品種は、自然老化時のエチレン生成量が極めて少なく、シム系品種「ホワイトシム」の約3倍の優れた花持ち性を示します。

研究の背景・ねらい

花持ち性は花きの重要形質の一つであり、消費者は花持ちの良い切り花を求めています。切り花の商品価値を高めるには、花が美しいだけではなく、それが少しでも長持ちすることが重要です。カーネーションではチオ硫酸銀錯塩(STS)等の品質保持剤により花持ち性の向上が図られていますが、これらの品質保持剤による環境汚染等の問題が指摘されています。そこで、品質保持剤処理を必要としない遺伝的に花持ちの良いカーネーション品種の育成を試みました。

成果の内容・特徴

  • 1992年に6品種を育種材料として交雑育種を開始しました。切り花の花持ち日数を指標とした選抜とその選抜系統間での交配を繰り返すことにより、カーネーションの花持ち性の改良が可能であることを明らかにしました。

    表1 カーネーション「つくば1号」、「つくば2号」の花持ち日数
  • 優れた花持ち性が最大の特徴である。「つくば1号」の花持ち日数は、17.7~20.6日、「つくば2号」の花持ち日数は17.9~20.7日と、シム系品種'ホワイトシム'の3.2~3.6倍の優れた花持ちを示しました(表1、写真2)。
  • カーネーションの花の老化には植物ホルモンのエチレンが大きく関与しています。両品種とも、自然老化時のエチレン生成量が極めて少なく、通常の品種で花弁の老化が始まるときに起こるエチレン生成量の急激な上昇(クライマクテリックライズ)が全くみられない特徴があります。このことが花を長持ちさせる理由です。

つくば1号
つくば2号
写真1 カーネーション「つくば1号」(上)、「つくば2号」(下)の花

写真2 'つくば1号'(中央)および対照品種'ノラ '(左)、'ホワイトシム(右)'の花持ち性の比較
写真2 'つくば1号'(中央)および対照品種'ノラ '(左)、'ホワイトシム(右)'の花持ち性の比較
蒸留水入りの花瓶に切り花を挿し、気温23°C、相対湿度70%、蛍光灯(光強度:10μmol・m-2 ・s-1)で12時間日長に調節した恒温室内で評価。