プレスリリース
(お知らせ) "TASUKE+"でゲノム情報の利用をお助け

- ゲノムナビゲーションシステムを大型アップデート -

情報公開日:2023年12月22日 (金曜日)

ポイント

  • 農研機構は、大量で膨大なゲノム1)情報を一目瞭然で見通せるゲノムナビゲーションシステムTASUKE+(タスケプラス)を2023年9月1日にアップデートし、機能を大幅に向上させた更新版をウェブサイトにて無料で公開しています。現在、穀物や野菜、果樹を対象とした研究者の皆様などから幅広く活用されています。
  • それぞれの個体のゲノム情報を活用するパーソナルゲノム時代に即した先鋭的なシステムとして、アップデートにより大量のデータを瞬時に表示・比較でき、高度な検索機能を利用できるようになりました。研究者、育種家、教育機関の皆様など、ゲノムや遺伝子情報を扱うユーザーを後押しする強力なツールとして利用いただけます。
  • 今回のアップデートを含む内容の発表をInternational Plant & Animal Genome Conference 31(2024年1月12~17日)にて行います。

概要

ゲノムは生物の設計図であり、ゲノム上に点在する遺伝子機能の違いにより、農作物においては、実の大きさや味などの違いが生じます。近年、食料安全保障の観点からも、多収・高品質な農作物の育成をいち早く実現するためにゲノム情報を活用したスマート育種2)研究が進展しています。ゲノム解析技術は進み、日々大量のゲノム情報が取得され続けています。新たな品種を育成するには、多くの品種から取得したゲノム情報を活用し、品種間の個性の原因となる遺伝子を見つけ改良することが必要ですが、大量のゲノム情報をスマートに扱うためには、瞬時に地図のように可視化し、遺伝子情報を探索できるツールが求められます。

農研機構では、ゲノム情報を瞬時に活用するためのツールとして2013年にTASUKE(タスケ)を、2019年にはアップグレード版であるTASUKE+(タスケプラス)を開発し、公開しました。2023年9月には、TASUKE+をアップデートし、機能を大幅に向上させた更新版をウェブサイトにて無料で公開しています。

TASUKE+は集めたゲノム情報を整理し、可視化し、検索でき、大量のゲノム情報を一目瞭然で閲覧できる先鋭的なツールです※※。例えば、市街地の地図においては、住所を調べたり、レストランを探したり、地形を見比べてみたりと様々な利用方法があるように、ゲノム情報も遺伝子の塩基配列を精査したり、複数の遺伝子の関係性を調べたり、遺伝子を他の種と比較したりと様々な目的で利用されます。このようなニーズを満たすナビゲーションシステムとしてTASUKE+は開発されました。現在、穀物や野菜、果樹を対象とした研究者の皆様などから幅広く活用されています。

さらに、TASUKE+はユーザーの用途によって、それぞれのTASUKE+を作成することが可能です。イネのゲノム情報を集めて整理したRAP-DBのイネ版TASUKE+(のべ訪問者数:5,585、ページビュー数:768,061(2022年11月~2023年10月))や、カンキツ類の情報をまとめたMikan Genome DBのTASUKE+等が公開されており、新たな品種の作成を助けています。その他にインターネット上で得られるゲノム情報や独自に取得したゲノム情報をTASUKE+に組み込んで利用することも可能です。

今回のアップデートでは、ゲノム情報を大量に組み込んでも瞬時に可視化できるよう内部処理機能を向上させたため、多くのユーザーのニーズを満たすものとなっています。他にも図に示すように様々なアップデートを施しました。ゲノム情報の活用に対するニーズは高く、個々の研究者、育種家、教育機関の皆様などがさらに大量のゲノム情報を扱う状況が予想されることから、今後もTASUKE+の更なるアップデートを続けていきます。

また、今回のアップデートを含む内容の発表をInternational Plant & Animal Genome Conference 31(アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴ、2024年1月12~17日)にて行います。

農研機構高度分析研究センターでは、上記のようなツールの開発のみならず、ツールの構築や研究・解析の支援、機器・施設利用の提供、またそれらを糸口とした共同研究開発を積極的に推し進めています。皆様の研究開発の促進をお助けします。

図 TASUKE+の機能とアップデートの概要(一部)

関連情報

※ TASUKE+システムウェブページ : https://tasuke.dna.affrc.go.jp/index.html
※※ 農研機構研究報告(2023年(2023)13号, p.89-97) : https://www.jstage.jst.go.jp/article/naroj/2023/13/2023_89/_html/-char/ja

問い合わせ先など
研究推進責任者 :
農研機構 基盤技術研究本部 高度分析研究センター
センター長山崎 俊正
研究担当者 :
同 ゲノム情報大規模解析ユニット
主任研究員熊谷 真彦
同 ゲノム情報大規模解析ユニット
エンジニア田部井 紀雄
同 ゲノム情報大規模解析ユニット
上級研究員川原 善浩
同 ゲノム情報大規模解析ユニット
ユニット長坂井 寛章
広報担当者 :
同 研究推進室 渉外チーム 主査杉山 憲明

詳細情報

用語の解説

ゲノム
生物の遺伝情報の全体のこと。デオキシリボ核酸(DNA)でコードされており、すべての生物に存在します。そのサイズは生物種により異なります。例えばイネでは約4億塩基対に対しコムギでは145億塩基対です。ダイズでは約11億塩基対で構成されており、これを広辞苑(1冊約1,500万文字)で表すと約73冊分となり、膨大な情報です。[ポイントへ戻る]
スマート育種
様々なデータ取得およびその解析に基づいて行う効率的な育種の総称。特に従来の選抜育種にゲノム情報解析を組み合わせることで、有用な遺伝形質をもつ個体を効率的に選抜する育種法のことをゲノム育種と呼びます。遺伝子タイプを確認することで実がなるなどの形質の表れを待たずに次世代の品種の候補の系統を選ぶことができます。[概要へ戻る]