農研機構
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社
ポイント
様々な野菜・花き類を加害し、多くの化学農薬に対し耐性をもつ農業害虫であるタバココナジラミ1)とワタアブラムシ2)に超音波3)を用いた非接触力4)を与えると、作物から離脱することを明らかにしました。特にタバココナジラミについては、1~480 Hzの振動を1分間与えることで、50%~60%の成虫を照射した葉から追い払うことができました。また非接触力を飼育箱中のタバココナジラミに合計8時間(1日あたり4時間)与えると、産卵数が半減し、超音波を用いた非接触力が害虫防除に有効であることが示されました。今後、照射範囲などの改良を進め、SDGs5)の一環である「持続可能な農業生産」に貢献しうる、新しい物理的防除技術として開発を目指します。
概要
タバココナジラミとワタアブラムシは、様々な野菜や観葉植物、花き類などを加害する重要害虫です。食害やすす病が問題となるだけでなく、多種の植物ウイルスを媒介することから、深刻な被害が世界中で広がっています。これらの害虫の防除には化学農薬が使用されていますが、様々な化学農薬に対して強い耐性を示すことから、化学農薬だけに頼らない、新たな防除技術が求められています。
今回、農研機構とピクシーダストテクノロジーズ(株)は、作物上のタバココナジラミとワタアブラムシに超音波を用いた非接触力を与えて反応を観察しました。その結果、タバココナジラミ成虫は約60%が葉から離脱し、ワタアブラムシは有翅成虫の25%、無翅成虫の14%が葉から離脱することを明らかにしました。さらに、非接触力を1日あたり4時間与えることでタバココナジラミの産卵数が約54%減少しました。
【動画】集束超音波で葉裏にいるタバココナジラミを離脱させる様子
https://youtu.be/bgS5VOYyIUQ
本成果から、超音波を用いた非接触力は、化学農薬を用いずに害虫を防除できる点において、これまでになかった物理的防除技術の開発に役立つと考えています。今後の実用化に向けて、温室内全域を移動可能な装置を開発し、離脱した害虫を粘着板や吸引機などで回収可能か検討していきます。
関連情報
予算:運営費交付金、イノベーション創出強化研究推進事業「害虫防除と受粉促進のダブル効果!スマート農業に貢献する振動技術の開発」(R2~4)
特許:特開2020-115855
研究員浦入 千宗