ポイント
農研機構は、トルコギキョウの花の香りの成分を解析し、ハーブのような香りの成分、甘い香りの成分など多様な成分を発見しました。本成果は、香りがないとされるトルコギキョウの花の香り成分についての世界で初めての報告であり、香りの良いトルコギキョウの品種育成のための基礎的な知見となるとともに、香りをトルコギキョウの新たな魅力として提示するものです。
概要
バラに代表されるように、消費者にとって切り花の大きな魅力の一つに香りの良さが挙げられます。国産花き生産流通強化推進協議会の調べでも、切り花の香りは消費者が花の購入時に重視するポイントの一つです(「花、植物に関する消費行動調査(2021年度)」)。トルコギキョウは、多様な花色、花形や日持ちの良さが魅力であり、国内の主要花き品目です。また、トルコギキョウは日本で育成された品種種子の世界シェアが高く、日本のみならず世界の人々を魅了する人気の切り花品目です。一方で、トルコギキョウの香りはごく弱く、ほとんどの品種は香りがないとされています。今後、香りの良いトルコギキョウの品種が育成されれば、商品価値はより高まり、国内外においてさらに魅力的な品目となることが期待されます。
トルコギキョウには、弱いながらも甘い香りを持つ品種が稀に存在します。期待されている香りの良いトルコギキョウを育成するためには、まずトルコギキョウの持つ甘い香りの成分を明らかにし、交配によってその成分を多く発散する品種を選抜していく必要があります。そこで農研機構は、弱いながらも甘い香りを持つトルコギキョウ「ニューリネーションホワイト」(図1)の花の香りの成分を分析しました。36種類の化合物が検出され、主要成分はハーブのような香りを持つα-セリネンなどのセスキテルペン1)であり、甘いスパイシーな香りを持つ成分としてオイゲノールなどの芳香族化合物2)が同定されました。「ニューリネーションホワイト」の花の甘い香りは、オイゲノールなどの芳香族化合物によるものであることが明らかとなりました。
オイゲノールはバラやカーネーションの香りにも含まれており、香りの良いトルコギキョウの育成の指標となります。オイゲノールを多く含む甘い香りを持つ品種が育成されれば、甘い香りのトルコギキョウとして、新たな魅力を持つ切り花となることが期待できます。
本成果は、科学雑誌「The Horticulture Journal」(2024年3月12日)に発表されました。