プレスリリース
果皮の光沢に優れる「きゅうり中間母本農6号」

- 台木を選ばないブルームレス性素材を育成 -

情報公開日:2011年8月 4日 (木曜日)

ポイント

  • キュウリ果実の表面にブルーム(白い粉)がなく、果皮の光沢が優れる中間母本を育成しました。ブルームだけでなく、果実表面のイボやトゲもありません。
  • ブルームレス台木を利用しなくても、果皮の光沢が優れ、果実表面がなめらかなキュウリ品種の育成が可能になります。

概要

農研機構 野菜茶業研究所【所長 望月龍也】は、キュウリ果皮にブルーム(白い粉)がなく、光沢が優れる中間母本「きゅうり中間母本農6号」を育成しました。果実表面には、ブルームだけでなくイボやトゲもありません。

わが国で流通している光沢が優れるキュウリは、ブルームレス台木といわれるカボチャ品種に接ぎ木することで生産されています。しかし、本来の特性として光沢のあるキュウリ品種が育成されれば、栽培条件に合わせ、ブルームレス台木に代わって強勢台木や低温伸長性に優れる台木を利用できるようになり、収量増大や生産コスト低減が期待できます。

今後、本中間母本を素材として用いることで、果皮の光沢に優れ、また、果実表面がなめらかなキュウリ品種の育成が期待されます。

予算:農林水産省プロジェクト研究「低コストで質の良い加工・業務用農産物の安定供給技術の開発」


詳細情報

新品種育成の背景・経緯

一般にキュウリ果実の表面はブルーム(白い粉)で覆われますが、わが国で流通しているキュウリはブルームがなく、光沢のあるキュウリ(ブルームレスキュウリ)となっています。ブルームレスキュウリは、ブルームレス台木といわれる特別なカボチャ品種に接ぎ木することで生産されています。しかし、本来の特性として光沢のあるキュウリ品種が育成されれば、栽培条件に合わせて強勢台木「新土佐」や低温伸長性に優れるクロダネカボチャ台木の利用も可能になり、収量の増大や生産コストの低減が期待できます。そこで、光沢のある品種育成のためのブルームレス中間母本の育成に取り組みました。

新品種「きゅうり中間母本農6号」の特徴

  • 「きゅうり中間母本農6号」は、わが国の節成型市販品種「翠星節成(すいせいふしなり)」((株)久留米原種育成会)とノースカロライナ州立大学から導入した完全ブルームレス性で無毛(茎葉に毛じが無い)のキュウリ系統NCG 90との交雑F1個体に、「翠星節成」を3回連続戻し交雑し、光沢性と果実形質をもとに選抜・固定した系統です。
  • 果皮の光沢に優れます(図1、図2)。果実表面にはブルームおよびイボ・トゲがありません。
  • 茎葉には、一般の品種に存在する小さいトゲ状の毛じ(もうじ)がありません(図3)。
  • ブルームレス性は劣性の1遺伝子支配で、後代に遺伝します。

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種苗の配布と取り扱い

  平成23年4月1日に品種登録出願(品種登録出願番号:第25785号)を行い、平成23年7月26に品種登録出願公表されました。
今後、中間母本として独立行政法人農業生物資源研究所・農業生物資源ジーンバンクから配布する予定です。

お問い合わせ先:
農研機構 野菜茶業研究所 企画管理部 運営チーム
Tel 050-3533-3815

 

用語の解説

ブルーム
果実の表面に発生する白い粉のことをブルームと呼びます。ケイ酸が主成分となっています。

ブルームレス台木
ケイ酸の吸収量が極端に少ないため、キュウリ果実にブルームが発生しないカボチャの台木です。ブルームレス台木に接ぎ木することで果皮の表面にブルームが発生せず、果皮の光沢が優れるキュウリ果実が生産されています。日本で生産される多くのキュウリは、ブルームレス台木を利用したブルームレスキュウリです。

強勢台木
生育が旺盛になる台木のことで、代表的な台木として「新土佐」があります。しかし、この台木を利用した場合、キュウリ果実にブルームが発生するため、現在では台木としてあまり利用されていません。

低温伸長性
低温でも生育が優れる特性のことです。クロダネカボチャは低温での根の伸長性に優れます。クロダネカボチャを台木として使用することで、低温でのキュウリの生育は優れますが、この台木を利用した場合、キュウリ果実にブルームが発生するため、現在ではクロダネカボチャは台木としてほとんど利用されていません。

中間母本
病害抵抗性などの有用形質を持つ植物は、実用品種と比較するとその形態が大きく異なっており、一般に作物としては役立ちません。このような素材から農業生産現場で使用される実用品種に改良するには長い年月と多大な労力が必要です。そこで、素材から有用な形質を維持したまま、実用形質をある程度まで目的の作物に近づけ、新品種育成のために利用可能な系統のことを中間母本と呼びます。種苗会社や公立研究機関等では、こうした中間母本を改良して優良な品種を育成しています。中間母本は病害虫抵抗性に限らず、晩抽性や機能性成分などさまざまな特性に及びます。

節成型
各節位に連続して雌花が着生し、果実が成るキュウリのタイプのことです。各節位に連続して雌花が着生せず、雌花と雄花が着生するキュウリのタイプを飛び成型と呼びます。