プレスリリース
レタスビッグベイン病抵抗性新品種「フユヒカリ」

- レタスビッグベイン病に強い高品質レタス品種を育成 -

情報公開日:2009年6月23日 (火曜日)

ポイント

冬春作レタス産地で大きな問題となっているレタスビッグベイン病に対し、従来の品種よりも強い抵抗性を持ったレタス品種「フユヒカリ」を育成しました。

 

概 要

農研機構 野菜茶業研究所【所長 望月 龍也】、東北農業研究センター【所長 岡 三德】、近畿中国四国農業研究センター【所長 鳥越 洋一】は、レタスビッグベイン病に対し、既存の抵抗性品種よりも強い抵抗性を有するレタス品種「フユヒカリ」を育成しました。

国内の冬春作レタス産地では、土壌伝染性のウイルス病であるレタスビッグベイン病が発生し、大きな問題となっています。防除対策として抵抗性品種の利用が望まれますが、現在販売されている抵抗性品種の抵抗性は必ずしも十分ではありません。「フユヒカリ」は、国内で利用されている抵抗性品種よりも強い抵抗性を有する、秋まき厳寒期どり用の品種です。


詳細情報

新品種育成の背景・経緯

レタスの秋まき厳寒期どり作型において、土壌伝染性の難防除病害であるレタスビッグベイン病が兵庫、香川をはじめ多数の県で発生し、現在も発生面積が拡大しています。抵抗性品種の利用は病害対策として有効であり、民間種苗会社からは「ロジック」などの抵抗性品種が販売されています。しかし、レタスビッグベイン病汚染度の高い圃場では、これらの品種の抵抗性は十分に発揮されず、収益の低下は避けられません。そこで、「ロジック」などよりも強い抵抗性を有する品種の育成が強く求められています。そこで私たちは、既存品種より強い抵抗性を有する高品質なレタス品種の育成に取り組みました。

レタス品種の中でトップレベルのレタスビッグベイン病抵抗性を有する「Thompson」(葉縁が波打ち、変形球率が高いなど品質に問題があります)と秋まき厳寒期どり作型用の優良品種「シスコ」(レタスビッグベイン病に罹病性です)を育種
素材としました。両者を交配し、その後代について選抜と自殖を繰り返して、高品質でレタスビッグベイン病に強い抵抗性を有した「フユヒカリ」を育成しました。

新品種「フユヒカリ」の特徴

  • 「フユヒカリ」( 図1 ) は、既存の抵抗性品種「ロジック」よりも強いレタスビッグベイン病抵抗性を示します(表1)。
  • 「フユヒカリ」の収量および球の品質は「ロジック」と同等です。また、秋まき厳寒期どり用の代表品種「シスコ」と比べ、2割以上の増収が期待できます(表2)。

図1.「フユヒカリ」収穫物の形状

 

表1 「フユヒカリ」のレタスビッグベイン病抵抗性検定結果

 

表2 「フユヒカリ」の形態・収量特性試験結果

 

品種の名前の由来

秋まき厳寒期どりの品種であることを「フユ( 冬)」で、レタスビッグベイン病の被害産地に希望をもたらすという願いを「ヒカリ( 光)」で表現しました。

種苗の配布と取り扱い

平成20年9月19日に品種登録出願(品種出願登録番号:第22981号)を行い、平成20年12月10日に品種出願登録公表されました。
今後、利用許諾契約を締結した民間種苗会社を通じて種子を販売する予定です。

用語の解説

レタスビッグベイン病
レタスに発生する土壌伝染性のウイルス病で、発症するとレタスの葉脈付近が退緑化し、その結果葉脈(vein)が太く(big)見えることからビッグベイン(big-vein)病と呼ばれています。発症するとレタスの玉は小さくなり、収量が低下します(結球しない場合もあります)。
本病は土壌生息菌類Olpidiumvirulentusに媒介されるミラフィオリレタスビッグベインウイルス( M L BV V) によって発症します。MLBVV は土壌中に長期間生存するため、本病が一度発生すると、レタスの栽培をやめない限り根絶するのは困難です。

写真.レタスビッグベイン病の病徴

秋まき厳寒期どり
9~10月に種をまき、1~2月に収穫する栽培です。

罹病性
病気にかかりやすいことを示します。