要約
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所は、受粉や植物ホルモン処理なしでも実の着くナス「あのみのり」他2点の野菜新品種を育成しましたので、御紹介します。
- 農作業の大幅な省力化が可能に -
情報公開日:2006年10月31日 (火曜日)
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所は、受粉や植物ホルモン処理なしでも実の着くナス「あのみのり」他2点の野菜新品種を育成しましたので、御紹介します。
通常のナス品種は受粉しなければ果実は肥大しません。特に冬季の施設栽培等の低温下では花粉ができにくくなるため、植物ホルモン剤による一花ごとの着果促進処理が行われています。
「あのみのり」は、イタリアから導入したナス品種「Talina」を、国内品種の「中生真黒」や「なす中間母本農1号」と交雑した後代から選抜した系統間の一代雑種(F1)で、受粉しなくても果実が自然に肥大する性質(単為結果性)をもち、着果促進処理をしなくても果実の生産が可能である画期的な品種です。
果実外観や食味も良好な品種で、暖地の促成栽培でも利用可能です。
植物ホルモン剤
植物の生長を調節する物質のことで、ナスの着果および肥大を促進するためには、その一種であるオーキシンが利用されています。
本研究の成果は農林水産省プロジェクト研究「画期的園芸作物新品種創出における超省力栽培技術の開発」で得られたものであり、現在、品種登録出願中です。
トマトはつるが伸長しながら次々に花が咲いていくため、長期の栽培ではつる長が5mを超えることもあります。このため、つるをずり下げて開花中の花房や収穫対象となる果実に人の手が届くようにしていく必要があります。
「とまと中間母本農11号」は、節間が短い加工用トマト系統の「盛岡7号」と市販品種の「桃太郎8」を交雑した後代に「桃太郎8」を戻し交雑し、その後代から選抜した品種で、葉と葉の間隔が短い(短節間性)ため、長期栽培で必要なつる下ろし作業の回数が大幅に削減されます。
つる下ろし作業
トマトはつるが伸長しながら次々に花が咲いていくため、長期の栽培ではつる長が5mを超えることもあります。このため、つるをずり下げて開花中の花房や収穫対象となる果実に人の手が届くようにする作業です。
本研究の成果は農林水産省委託プロジェクト研究「新鮮でおいしい『ブランド・ニッポン』農産物提供のための総合研究 6系 野菜」で得られたものであり、現在、品種登録出願中です。
図2 「とまと中間母本農11号」の草姿
(左から「中間母本農11号」、「瑞栄」、「桃太郎8」、赤い矢印は第6果房位置を示す。)
図3 「とまと中間母本農11号」の果実
きゅうりは、一般的に外観品質を損なう果実表面につく白い粉(ブルーム)を無くす効果のある接ぎ木用の台木を用いて経済栽培が行われていますが、果肉が軟らかくなる等の欠点が指摘されています。
「きゅうり中間母本農4号」は、果実が硬く食感に優れる中国のきゅうり「新昌白皮」に日本のきゅうり品種を交配した後代から、パリパリとした食感に優れる系統を選抜した中間母本用品種で、市販品種「久輝」に比べ、果肉が硬く、果肉の割合(果肉比)が高くて、相対的に軟らかい胎座部分(果実の真ん中の種子がある部分)の割合が低いことから、果実が硬く、食感に優れています(表3)。
ブルームレス台木
キュウリの外観品質を損なう果実表面につく白い粉(ブルーム)を無くす効果のある接ぎ木用の台木。経済栽培では一般化しているが、果肉が軟らかくなる等の欠点が指摘されています。
現在、品種登録出願中です。
図4 「きゅうり中間母本農4号」の果実