要約
ハクサイ根こぶ病は通常の方法では防除の難しい土壌伝染性病害の一つです。これまで根こぶ病に抵抗性の品種が利用され、一定の成果を挙げてきましたが、根こぶ病菌は抵抗性のハクサイ品種を新たに加害できる新しい系統が分化しやすいため、既存の抵抗性品種が発病してしまって甚大な被害を及ぼすことがあります。
今回、野菜茶業研究所では、根こぶ病に対して強度の抵抗性を有するハクサイ個体を効率的に選抜できるDNAマーカー*を開発しました。今回開発した2個のDNAマーカーを調べることによって、ハクサイの抵抗性の程度を簡単に判断できます。この技術によって、抵抗性を検定する作業を大幅に省力化できるだけでなく、定植する前の幼苗で抵抗性の選抜を行えるので、品種改良(育種)を効率的に行うことができます。
* DNAマーカー
DNA塩基配列の品種間での違いを識別することで、ゲノム上の標識(目印)としたもの。染色体上の遺伝子内あるいはその近傍の塩基配列に違いがあり、その違いを識別できれば、DNAマーカーとして利用できる。DNAマーカーによって、特定の遺伝子を含む染色体のある領域が親から子へ受け継がれたかどうか検定できる。