プレスリリース
生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業コンソーシアム「茶の抗アレルギー作用を利用した食品の開発」プロジェクト「べにふうき」緑茶に期待される健康機能

情報公開日:2005年12月 9日 (金曜日)

茶コンソーシアム

要約

独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 野菜茶業研究所、九州大学大学院農学研究院、名古屋女子大学家政学部、静岡県立大学薬学部、東京海洋大学保健管理センター、アサヒ飲料株式会社、森永製菓株式会社の産学官からなる研究共同体「茶コンソーシアム*」では、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 生物系特定産業技術研究支援センターによる「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」として、「茶の抗アレルギー作用を利用した食品の開発」プロジェクトに2001年から5年間取り組み、「べにふうき」茶に多く含まれる「メチル化カテキン」の特性等について研究し、その抗アレルギー作用のメカニズムを初めて解明しました。臨床試験でもその効果を確認し、さらに「べにふうき」茶の飲料や食品への利用方法についても研究・開発し、その成果をまとめました。

*「茶コンソーシアム」につきましては、次項をご参照下さい。

現在、花粉症の患者数は、全国で1300万人ともいわれ、こういったアレルギー患者は急増しています。「茶コンソーシアム」では、このような状況を受け、日常的に摂取でき、副作用の心配が少ない茶のカテキン類によるアレルギー症状の軽減をテーマとして研究をスタートさせました。

この「茶の抗アレルギー作用を利用した食品の開発」プロジェクトでは、茶葉中機能性成分のうち、抗アレルギー効果が期待される「メチル化カテキン」に着目し、茶品種検索の結果、それを多量に含む「べにふうき」茶を研究対象としました。

「べにふうき」茶の「メチル化カテキン」は、茶葉を発酵させて紅茶にすると消失してしまうため、不発酵茶、すなわち緑茶として加工する必要があります。今回の研究では、「べにふうき」緑茶が含有する「メチル化カテキン」について、その抗アレルギー作用のメカニズムが初めて明らかになったほか、体内への吸収率(腸管吸収)や血中滞留性が高いといった特性も判明。また、臨床試験では、通年性アレルギー(アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎)、季節性アレルギー(スギ花粉症)に対する効果も確認されました。さらに、飲料としての最適抽出方法や、食品応用時の苦味・渋味の低減方法等についても開発いたしました。

写真 「べにふうき」緑茶
「メチル化カテキン」を豊富に含む
「べにふうき」緑茶

研究の概要と成果

プロジェクトの概要

研究課題

「茶の抗アレルギー作用を利用した食品の開発」

研究機関

「茶コンソーシアム」

メンバー

独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 野菜茶業研究所、九州大学大学院農学研究院、名古屋女子大学家政学部、静岡県立大学薬学部、東京海洋大学保健管理センター、アサヒ飲料株式会社、森永製菓株式会社

研究期間

2001年9月~2006年3月末

研究内容

「べにふうき」緑茶が含有する抗アレルギー成分「メチル化カテキン」に関する基礎・臨床試験、「べにふうき」の茶葉特性解明試験を実施し、「べにふうき」緑茶を利用した飲食品開発につなげる

「茶コンソーシアム」とは?

「茶コンソーシアム」とは、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 野菜茶業研究所、九州大学大学院農学研究院、名古屋女子大学家政学部、静岡県立大学薬学部、東京海洋大学保健管理センター、アサヒ飲料(株)、森永製菓(株)からなる研究共同体です。「茶の抗アレルギー作用を利用した食品の開発」プロジェクトが、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター(注)の「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」(提案公募型プロジェクト)に採択されたのを機に、2001年正式に発足。以来、「べにふうき」という茶品種を対象に研究活動を続けてきました。

(注)独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター
民間等における生物系特定産業技術に関する研究及び技術開発の支援、農業機械化の促進などを担う。2001年から「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」を実施。毎年、産学官の連携により異分野の研究者が共同して研究を行う研究共同体(コンソーシアム)、独創的な発想や研究シーズを活かしたベンチャー創出を目指す研究者から研究課題を公募・審査し、採択された研究課題に対し研究資金の助成などを通じて新事業の創出や起業化の促進につながる技術開発を支援している。

「茶コンソーシアム」の構成と役割

図 「茶コンソーシアム」の構成と役割

研究テーマ・実施機関・研究内容・トピックス

1)研究テーマ:「べにふうき」茶の特性を探る

実施機関

独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 野菜茶業研究所
茶機能解析研究室長 山本(前田)万里

研究内容

「べにふうき」茶の特性や抗アレルギー効果の作用メカニズムを研究

トピックス

「べにふうき」茶は、抗アレルギー効果が期待される「メチル化カテキン」を主要茶品種中で極めて多く含むことを確認。「べにふうき」茶の「メチル化カテキン」は、完全発酵させると消失することから、緑茶での加工の方向性が決まり、「メチル化カテキン」の作用メカニズムも一部解明

2)研究テーマ:「メチル化カテキン」の作用点を探る

実施機関

九州大学大学院農学研究院 助教授 立花宏文

研究内容

「メチル化カテキン」の抗アレルギー効果の作用メカニズムを解明

トピックス

「メチル化カテキン」の抗アレルギー効果は、アレルギー反応を誘導するIgE(免疫グロブリンE)受容体の発現と炎症物質ヒスタミンの産生を抑制することによることを実証

3)研究テーマ:「メチル化カテキン」類の特性、体内動向を探る

実施機関

名古屋女子大学家政学部 教授 佐野満昭
静岡県立大学薬学部 助教授 宮瀬敏男

研究内容

「メチル化カテキン」の体内吸収率や滞留性、抗酸化性などについて研究

トピックス

「メチル化カテキン」の腸管吸収率は、茶の主要カテキンであるエピガロカテキンガレートの5~6倍と高く、血中からの消失もエピガロカテキンガレートに比べ緩やかであることがわかった

4)研究テーマ:「べにふうき」緑茶のヒトへの効果を試す

実施機関

東京海洋大学保健管理センター 教授 木谷誠一

研究内容

「べにふうき」緑茶の抗アレルギー効果を臨床試験で確認

トピックス

「べにふうき」緑茶の長期投与により、通年性アレルギー患者と季節性アレルギー患者でともに改善効果を確認

5)研究テーマ:「べにふうき」緑茶の効果を活かした飲料を開発する

実施機関

アサヒ飲料(株)飲料研究所商品開発グループ 副課長 永井寛

研究内容

「べにふうき」緑茶を用いた容器詰め飲料の研究開発

トピックス

苦味を低減させ「メチル化カテキン」の減少を抑える最適火入れ条件を確認。また、緑茶飲料の製造工程で、高温抽出、長時間高温殺菌がヒスタミン遊離抑制活性を高めることも実証

6)研究テーマ:おいしい「べにふうき」緑茶入り菓子を開発する

実施機関

森永製菓(株)ヘルスフードサイエンス研究所健康機能研究室 室長 亀井優徳

研究内容

「べにふうき」緑茶を用いた菓子の研究開発

トピックス

「べにふうき」緑茶入り菓子の開発で苦味・渋味を抑制する方法を開発。また、実際に開発した「べにふうき」を含む菓子は、代表的茶品種「やぶきた」を含む菓子より高いスギ花粉症の改善効果を確認