要約
野菜茶業研究所は、施設園芸用大型鉄骨ハウスの建設コストの画期的な低減に向けて、大阪府立大学大学院農学生命科学研究科、グリンテック(株)、MKVプラテック(株)、(独)農業工学研究所、愛知県農業総合試験場と共同で、新部材・新工法による低コストハウスの開発研究に取り組んできました。
このたび、トマト栽培用の大型ハウスとして面積約1,000m2の実用モデルの建設実証を武豊野菜研究拠点において行いました。この結果、ほぼ試算通りの短い作業時間で建設することができ、画期的な工期の短縮、低コスト化の見通しが立ちました。
この研究は農林水産省の委託事業として実施しているもので、経営の圧迫要因となるハウス本体の建設コストを、従来の約1/2まで低減することを目標の一つに掲げています。
1.共同研究の課題
トマト産地のリニューアルに向けた低コスト生産システムの開発
(農林水産省:「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」のうち地方領域設定型研究(東海地方)、H16~18年度)
2.共同研究の目的
施設園芸が早期に発達した地域では、軒高が低く形式の古い小型施設を利用して生産を続けてきましたが、老朽化が進んでいます。このため、栽培施設を軒の高い大型のものに更新して、それを利用した合理的な栽培技術へ転換し、雇用労働力の導入や法人化するなど、施設と栽培技術、経営形態のすべてについて、総合的なリニューアルが緊急の課題となっています。施設の更新に関しては、現在、十分な耐候性があって周年栽培が可能な大型鉄骨ハウスは設置コストが高額で、そのまま導入するには経営への圧迫が大きい状態にあります。そこで本研究は、まず、鉄骨ハウス本体の初期設置コストが従来の約1/2となる新部材・新工法による低コスト大型ハウスを開発します。つぎに、これを利用した、周年高品質安定生産が可能な低コスト生産技術を体系化します。
3.共同研究の分担
- 低コスト大型ハウスの開発(グリンテック(株)、大阪府立大学、MKVプラテック(株)、(独)農業工学研究所)
新部材および新工法により、鉄骨ハウス本体建設コストが従来の約1/2となる大型ハウス(~5,000m2規模)を開発します。 - 低コスト大型ハウスを利用したトマト周年生産技術の体系化と導入指針の策定(愛知県農業総合試験場)
新部材・新工法大型ハウスの利用を前提として、周年高品質安定生産技術を体系化して、大規模経営手法を提示します。
4.今回の公表内容
従来の鉄骨ハウスとは根本的に異なる新部材である薄板軽量形鋼、および新工法であるパイプ基礎工法・屋根部ユニット工法(いずれもグリンテック(株)開発)を適用して、トマト栽培用ハウス(約1,000m2)を設計し、建設実証を行いました。
この新部材・新工法により、材料費の低減や工期の画期的な短縮が可能になり、ハウス本体の建設コストを大幅に低減できる見通しが立ちました。
5.具体的な成果
従来の大型鉄骨ハウスと比較して、以下の特徴が確認できました。
- パイプ斜杭基礎では、一般的な基礎の約2倍(2ton以上)の引抜き耐性を確保できることがわかりました。
- 新部材の利用により、耐風性50m/sを確保した上で、本体の鉄重量を従来の約65%に減量できました。
- 建設工数を約60%に短縮できました。また、基礎工事と並行して屋根部の地上組み立て作業が可能で、ハウス本体の建設工期を約35%に短縮可能な工法であることを実証しました。
- ハウス本体の建設コストの推定値は、現時点で従来型の約60%です。今後、部材や流通の合理化を検討することにより、従来型の約50%という当初目標にかなり近づけられる見通しが立ちました。