プレスリリース
青枯病・半枯病に強いナス台木用品種「台三郎」育成

情報公開日:2004年1月26日 (月曜日)

要約

青枯病ならびに半枯病は高温期に発生しやすく、わが国のナス栽培では極めて重要な土壌伝染性病害である。これら病害を回避するために、抵抗性台木品種への接ぎ木が行なわれている。これまでのナス台木品種は、近縁種または近縁種と栽培ナスとの一代雑種が中心で、接ぎ木しにくい品種が多い。野菜茶業研究所では1995年に青枯病・半枯病複合抵抗性で接ぎ木が容易な'台太郎'を育成したが、一代雑種であるために採種コストがかかるほか、草勢がやや弱いなどの欠点を残していた。そこで、これら欠点を改良し、栽培ナスと同じ植物種で接ぎ木もしやすく、青枯病・半枯病複合抵抗性を有し、草勢の強い台木用の固定品種「台三郎」を育成した。

'台三郎'の育成経過

1992年に'南頭茄'×'LS1934'の組合せの後代を供試し、以後、青枯病と半枯病の複合抵抗性について選抜を繰り返した。1999年にF9世代で諸特性が実用的に固定した系統を得たので、'ナス安濃2号'の系統名で2000年~2002年にわたり全国各地で病害抵抗性と台木適性について試験をした結果、台木としての優秀性が認められた(図)。

'台三郎'の特徴

  • '台三郎'は青枯病および半枯病幼苗検定において発病株率および発病指数が低く、青枯病汚染圃場検定でも発病指数は低く、生存株率および健全株率が高く、両病害に強度の複合抵抗性を有している(表1)。
  • 発芽の早さ・揃いおよび幼苗期の生育は良好で、接ぎ木は容易である。
  • 接ぎ木個体の収量は良好である(表2)。収穫果の果形、果色は接ぎ木しない場合と比較しても変わらず、優れている。'台三郎'は根系が発達するので、後半の草勢が強い。
  • ナス栽培種の固定品種であり、採種コストが安い。

'台三郎'利用上の注意点

  • ナスの青枯病常発地域における台木品種として利用できる。
  • 半身萎凋病、ネコブセンチュウのような他の土壌病害虫に対しては抵抗性がない。また、青枯病に対しては非常に強いものの、免疫抵抗性ではなく、高温や高菌密度条件下では発病する可能性があるので、土壌消毒など他の防除法と併用することが望ましい。
  • 接ぎ木個体の草勢は近縁種の'トルバム・ビガー'、'トレロ'台のものに比べ少し弱いので、'台太郎'と同様に栽培後期まで草勢を維持する肥培管理が必要である。
  • 低温伸長性は'ヒラナス'より劣るので、促成作型には適さない。

詳細情報

図 'ナス安濃2号'の育成系統図

表1 「台三郎」の青枯病抵抗性と半枯病抵抗性(H14、育成地)

表2 ナス接ぎ木個体の収量性zと接ぎ木部の大きさy(H14、育成地)

用語集

近縁種
ナスの栽培種は学名でSolanum melongenaというが、Solanum integrifoliumSolanum torvumなどのように分類学上近いが、同じ種ではないものをいう。

一代雑種
F1とも言われるが、例えばAという品種にBという品種を交配してできた種子(種子だけでなくその世代も含む)を一代雑種という。一代雑種は、揃いや生育が良好である場合が多いが、一方で交配操作が面倒で採種コストがかかる。

固定品種
遺伝的に固定した品種をいう。自殖可能な植物では自殖を続けていくと各遺伝子がホモ化され、遺伝的に固定する。固定品種では他品種の花粉が混入しない限り、自殖すると次世代も同じ形質を示す。一方、一代雑種品種を自殖すると、次世代では個体によって種々の形質を示す。