これから秋に向けて果物のおいしい季節です。今回のお話は世界で最も生産量の多い果物の一つである「ブドウ」です。その多くがワイン用ですが、日本で作られたブドウは生で食べるのが一般的です。ブドウの旬は8月~10月です。
「旬」の話題
「ブドウ」のお話
情報公開日:2010年8月20日 (金曜日)
ブドウの起源・生産地
ブドウ(学名:Vitis spp.)は、ブドウ科ブドウ属の蔓性植物です。
ブドウは世界でも古くから栽培されてきました。世界で主に栽培されているのはヨーロッパブドウ(Vitis vinifera L.)で、古い時代からカスピ海南部沿岸、黒海沿岸、地中海沿岸の南ヨーロッパ・北アフリカに広がっていました。日本へは中国から伝わり、その血を持つブドウが鎌倉時代には現在の山梨県甲州市で栽培されていました。
一方、北アメリカでは19世紀頃にアメリカ原生種からの選抜やアメリカ原生種とヨーロッパブドウの交雑などから多くの品種が生み出され、アメリカブドウ(Vitis labruscana Bailey)と呼ばれています。
日本では、明治になり、海外から多くの品種が導入され、その後品種改良も行われて多くの品種が生まれています。
日本で生産される主なブドウの種類・特徴
ブドウは果皮の色によって大きく「黒」・「赤」・「緑」の3つに分けることができます。
ブドウの収穫量
ぶどうの都道府県別収穫量割合(2009年)
資料:農林水産省「平成21年産日本なし、ぶどうの結果樹面積、収穫量及び出荷量」[PDF:336KB]
ブドウの機能性・成分
着色しているブドウの果皮には、アントシアニンなどのポリフェノールが豊富に含まれています。赤ワインは果皮のポリフェノールが多く含まれています。ポリフェノールには、抗酸化作用があり、動脈硬化や発がん物質の原因ともされている活性酸素の効果を抑える作用があり、健康維持への貢献が期待されています。
肉質が優れ、大粒で食味良好なブドウの新品種「シャインマスカット」
ここでは、農研機構 果樹研究所が育成したブドウ新品種「シャインマスカット」をご紹介します。
品種育成の背景
わが国では、「巨峰」・「ピオーネ」などの大粒品種、種なしブドウに対する需要が大きいといえます。生で食べるブドウの種類は主にアメリカブドウとヨーロッパブドウがありますが、ヨーロッパブドウは病害に弱く、生理障害も出やすいため、生産が少ない状況です。
しかし、ヨーロッパブドウの持つ「かみ切りやすくて硬い肉質」やマスカット香に対して大きな消費需要があります。そこで、肉質がかみ切りやすくて硬く、マスカット香を持ち、大粒で種なし栽培できる上、裂果などの生理障害を発生せず、一定の耐病性があって栽培しやすい品種の育成を行いました。
「シャインマスカット」の主な特徴
果皮色が黄緑色で、マスカットの香りがあり、かみ切りやすくて硬い肉質の大粒ブドウです。甘味が高く、酸味の少ないブドウです。ジベレリン処理により種なし栽培が可能です。 果皮が比較的薄く、皮ごと食べられます。日持ちは「巨峰」・「ピオーネ」より長いブドウです。黒とう病には強くありませんが、べと病や晩腐病には「巨峰」に近い耐病性があります。短梢剪定栽培ができます。