「旬」の話題

「ナス」のお話

nasu-m.png もうすぐ暑い季節になります。今回は夏バテ防止にもなる夏野菜「ナス」のお話です。1年を通して手に入るナスですが、旬は6月~9月といわれています。

ナスの起源

ナス(学名:Solanum melongena)は、ナス科ナス属の潅木性多年草です。 原産地はインドの東北地方で、中国から8世紀以前に日本へ伝わったとされています。
日本には平安時代に、奈須比(なすび)として伝わり、1200年以上栽培されてきました。

ナスの種類

ナスの品種は、形状によって分類されています。大きく分けて丸ナス、長ナス、卵形ナスの3種類に分けられます。

  • 丸ナス
    東北から関西にかけて多く作られています。丸くて大きいものは直径10cm重さ1kg近くにもなります。果肉がしまっていてきめ細かく甘みがあります。焼き物に使われることが多く、田楽にするととても美味しいです。
    代表的な品種は賀茂ナス、紫へたナスがあります。
  • 長ナス
    東北と九州を中心に栽培され、関西地方で多く出回っている品種です。長さ20cm~25cm重さ100g前後と細長いのが特徴です。果実がやわらかく、焼きナスがおすすめです。煮物や漬物にもぴったりです。
    代表的な品種は筑陽ナス、黒陽ナス、仙台長ナスがあります。
  • 卵型(長卵型)ナス
    関東を中心に栽培され、適度に果肉がしまり種子が少ないのが特徴です。皮は黒紫色で薄く、主に浅漬用として使われています。
    代表的な品種は真黒ナスと千成ナスで、水ナスも含まれています。

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独立行政法人 農畜産業振興機構「野菜図鑑」から引用

その他にも丸ナスに似た米ナスがあります。見分け方はヘタの色が緑色なのが米ナスです。果肉が厚めで固く加熱しても形がくずれにくいのが特長です。煮物、揚げ物、炒め物など幅広く使えます。

ナスの都道府県別収穫量

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夏秋ナスの都道府県別収穫量(2009年)

資料:農林水産省「平成21年産春野菜・夏秋野菜等の作付面積、収穫量及び出荷量」[PDF:772KB]

ナスの見分け方

ナスは色の鮮やかさが鮮度を見分ける大切な要素です。黒紫色が美しく、はりと艶のあるものは果実が良質です。さらにヘタが黒くて、切り口がみずみずしく、トゲがあり堅くて痛いものは新鮮な証拠です。

ナスは乾燥しやすいので、保存するときはラップに包んで冷蔵庫にいれると1週間ほど持ちます。

ナスの効能・栄養

栄養的には、生体を調整する機能に優れている物を多く含んでいます。ナスの皮の黒紫色の色素には、ナスニン、ヒアチンなどのアントシアニンと果実の中には抗酸化物質のポリフェノールを多く含んでいます。ポリフェノールは赤ワインなどに多く含まれていて、コレステロール値を下げ動脈硬化を防いでくれます。体内に発生した活性酸素を消してくれる働きなどもあります。

受粉しなくてもおいしい果実ができるナス品種「あのみのり」

ここでは、農研機構 野菜茶業研究所が育成したナス品種「あのみのり」をご紹介します。

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「あのみのり」の草姿(写真左)と果実(写真右)

「あのみのり」の主な特徴

花粉を受粉させなくても大きな果実ができます。果実は長卵形でおいしく、しっかりとした重さで皮には光沢があります。着果促進剤処理が不要なため、促成栽培等において大幅な栽培管理労力の軽減が可能です。

品種育成の背景

低温期のナス栽培においては、着果および果実の肥大安定化のために着果促進剤処理や訪花昆虫が利用されています。しかしながら、着果促進剤処理に要する労力は栽培に要する全労働時間の約1/4∼1/3を占めるほか、訪花昆虫利用は花粉形成に必要な最低温度の確保が前提であるとともに、セイヨウオオマルハナバチ等の広く使われる外来種は生態系への影響も懸念されています。これらの問題を解決するために、着果促進処理を必要としない単為結果性品種を育成しました。