「旬」の話題

今が旬の「栗」のお話

ibuki1.jpg秋を代表する果物としておなじみの栗。

栗ごはん、栗きんとん、甘露煮、マロングラッセ、天津甘栗など様々なメニューで親しまれています。

今回はちょうど旬を迎えているこの栗について調べていきたいと思います。

栗の種類

栗はブナ科の落葉樹で、北半球の温帯地域に分布しています。世界中の栗には大別して「アメリカ栗」「ヨーロッパ栗」「中国栗」「日本栗」の4種があり、それぞれの性質によって利用目的も分かれています。

アメリカ栗は胴枯病という病気に弱く、今では果実としての利用はほとんどありません。

ヨーロッパ栗は小粒でマロングラッセなどを作るのに適しています。

中国栗は小粒で渋皮がむきやすく、甘みも強いため焼き栗に適しています。おなじみの「天津甘栗」などに使われているのはほとんどこの中国栗です。

日本栗は他の栗にくらべて大粒で水分も多いため、茹でて調理するのに適しています。一方、渋皮がむきにくいため、焼き栗などには適さないとされています。

日本におけるクリ栽培の歴史

日本における栗の果実利用の歴史は古く、三内丸山遺跡など各地の遺跡から炭化した栗が見つかっています。原始的な形態ではありながら、縄文時代から栗の栽培が行われていたと考えられています。

国内各地に様々な品種が栽培されていましたが、1941年に岡山県で発見されたクリタマバチが急速に全国に蔓延し、 多くの品種が失われました。
それ以降、「丹沢」「伊吹」「筑波」など 抵抗性のある品種の育成、普及が行われ、現在に至ります。

栗の生産量

最盛期には6万トンを超えた国内の生産量は、現在約2万トン程度になっています。
平成19年の国内のクリ生産量は約2万1000トン、栽培面積は約2万3000haでした。

主な産地としては、茨城県が24%で生産量全国1位、ついで熊本県が14%、愛媛県が8%、岐阜県が5%となっており、この4県で全国の約5割を占めています。参考:平成19年産西洋なし、かき、くりの収穫量及び出荷量(農林水産省)

品種別栽培面積

1位 筑波 23.3%
2位 丹沢 12%
3位 銀寄 11.4%
4位 石鎚 4.1%
5位 利平 4%

栽培面積の多い上位5品種です(平成15年度)。

このうち「筑波」「丹沢」「石鎚」は農研機構の果樹研究所(前身の園芸試験場・果樹試験場)で育成された品種です。

おいしい栗の見分け方

クリは古くなると実の水分が蒸発して軽くなるので、重い物を選ぶと良いでしょう。鬼皮に光沢、張りがあるかどうかもポイントです。

栗の保存方法

栗は日が経つと香りが失われたり、虫に食われたりしてどんどん質が落ちていきます。

長期間保存したい場合は、80度ほどのお湯で1分間茹でましょう。茹で終えたらすぐに水気を切り、陰干ししてビニール袋に入れます。この方法だと1~2ヶ月は鮮度を維持したまま保存することができます。

また、栗は0度近く(冷蔵庫のチルド室の温度)で保存すると糖度が増すと言われています。

農研機構が開発した品種

渋皮がかんたんにむける「ぽろたん」

porotan_3.jpg日本栗は果実が大きく、果肉が滑らかで独特の風味を持つなど、多くの優れた性質をもっていますが、 同時に中国栗やヨーロッパ栗と比べると渋皮がはがれにくいという欠点もあります。これが渋皮をむく煩雑さ、果肉の歩留りの悪さにつながり、 加工コストの上昇、消費低迷の一因となっています。

渋皮のむきやすさと果実の大きさを兼ね備えた日本栗品種を育成するため、中国栗と日本栗の雑種の育成など様々な試みが行われてきましたが、 これまで成功した例はありませんでした。

果樹研究所では渋皮のむきやすさに関する簡単な調査法を開発し、育種に応用した結果、果実が大きく渋皮のむきやすい画期的な日本栗品種「ぽろたん」の育成に成功しました。

「ぽろたん」の特徴

焼き栗の渋皮のむきやすさが、甘栗に使われる中国栗並に優れています。果実は30グラム程と大きく、果肉色は黄色で果肉質は粉質、甘味、香気はともに多く、果実品質に優れています。破裂しないように鬼皮にナイフ等で果肉まで達する程度の傷を数本つけた後、電子レンジ(700W)で2分間、またはオーブントースター(180°C)で15分間加熱することで、簡単に渋皮を除去することができます。

品種名の由来

早生の主力品種である「丹沢」の子であり、渋皮がポロンとむけることと、広く愛されてほしいとの願いをこめて「ぽろたん」と命名しました。

農研機構果樹研究所のホームページではさらに詳しい「ぽろたん」の紹介や、実際にぽろんと渋皮がはがれる動画をご覧いただけます。