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農と桜

筑波研究学園都市にある「つくば農林研究団地」には多数の桜が植えられ市民の目を楽しませています。有名なアメリカ合衆国ポトマック河畔の桜にも農と関係する話があります。恒例のフィールドサーバによる開花映像とともに、農と桜にまつわる話をご紹介します。

つくば農林研究団地の桜

「富山和子がつくる日本の米カレンダー」の詩の中に次の一節があります。

つくば農林研究団地の桜

「桜は稲の神の依り代
春、里へ下りてこられ
その年の米の出来具合をお告げになる
日本人が桜の下で酒盛りをしたのも
稲の神をお迎えする儀式だった」

※詩、写真とも「富山和子がつくる日本の米カレンダー」
(2013年版)4月「丹波の里」より。
詩(抜粋):富山和子
写真撮影:山本 一

桜には稲の神が宿るとされ、農にとっても特別な花でした。「つくば農林研究団地」の連絡道路にも桜が植えられました。春になると、見頃の樹齢を迎えた約500本の桜が美しい花を咲かせます。この「農林さくら通り」はつくば市の代表的な花見スポットとなりました。付近に設置したフィールドサーバから開花状況がリアルタイムで確認できます。

フィールドサーバによる桜のリアルタイム開花映像

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そういった場合は、時間をおいて再度アクセスしてください。

フィールドサーバ写真

※フィールドサーバは農研機構が開発したモニタリングロボットです。気温・日射量などのセンサ、高機能カメラ、太陽電池などを内蔵しており、遠隔地の観測を行いインターネット経由でデータを得ることができます。

アメリカ合衆国ポトマック河畔の桜

アメリカ合衆国ワシントンDCのポトマック河畔でも日米友好の桜が花を咲かせます。約100年前に行われた日本からの桜寄贈は、当時のタフト大統領夫人、紀行作家のエリザ・シドモア女史、尾崎行雄東京市長など日米友好関係の発展を願う多くの人々によって実現しました。

アメリカでは、農務省の植物探検家ディビット・フェアチャイルド博士、同省の昆虫学者チャールス・L・マーラット博士らが美しい桜に関心を持ち、桜の植栽を提唱し、シドモア女史らに影響を与えました。

里帰り桜の銘板日本では、桜寄贈を決定した東京市が1909年に苗木約2,000本をアメリカに送りましたが、病害虫の付着のため、現地で焼却処分することとなりました。このため、東京市は農商務省に依頼し、農事試験場園芸部(現在の農研機構果樹研究所興津拠点)で苗木づくりが行われました。現在のような農薬がない当時、害虫付着のない健全な苗を大量につくることは大変困難な仕事でしたが、見事に成功し1912年ついに桜苗木が寄贈されました。

昨年、桜寄贈100周年を記念し、アメリカに贈った「ソメイヨシノ」から取った穂木を日本に里帰りさせる「桜里帰り植樹式」が興津で開催されました。「里帰り桜」の1本は興津拠点に植えられ、大切に管理されています。