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切り花の日持ち保証

春は花の季節、野山や庭に咲く美しい花を見て、家の中でも切り花を楽しみたいものです。でも、買った花がすぐに萎れてがっかりすることもあります。今回は、切り花の品質保持技術が進歩し「日持ち保証」も可能になってきた話をご紹介します。

花々の写真

切り花が観賞価値を失うのはどのような要因によるものでしょうか?それに対処し、日持ちを延ばす技術はあるのでしょうか?多くの花に共通する主な要因については次のとおりです。

<エチレン>
エチレンは植物自体から発生する植物ホルモンの1つで、多くの切り花の老化を進めます。エチレンに対する強弱は花の種類により大きな差があります。例えば、エチレンに非常に弱いカーネーションでは、生産者が出荷前に薬剤処理を行うことでエチレンの発生が抑制され日持ちが大幅に改善されています。

<導管閉塞>
花茎の導管内で細菌が増殖すると導管が詰まります。その結果、水揚げが悪化し、切り花が萎れます。導管の詰まりを抑えるためには、消費者による購入後の抗菌剤を含む品質保持剤の使用が効果的です。

<糖質の不足>
糖質は植物の重要なエネルギー源です。切り花は室内という光合成するには不十分な明るさのところに置かれることもあり、徐々に糖質が不足してきます。特に、蕾が開くためには多量のエネルギーを要するため、糖質が不足するときれいに開花できません。バラ、トルコギキョウなど多くの花で、糖質を含む品質保持剤により蕾からの開花が促進され日持ちが延長されます。

花は種類が多く性質も異なるため、主な切り花ごとに、日持ちを向上させるために、生産者、流通業者、小売店、購入した消費者がどのような処理をすれば良いかが研究されました。その結果、バラのように日持ちが悪いとされていたもの、チューリップのように有効な品質保持技術がなかった品目でも成果が得られています。

バラでの品質保持効果
バラでの品質保持効果(左:無処理、右:処理、30°C、日持ち検定8日目)

チューリップでの品質保持効果
チューリップでの品質保持効果(左:処理、右:無処理、20°C、日持ち検定8日目)


近年、我が国でも「切り花の日持ち保証販売」の取り組みが進められています。これは、消費者に5日あるいは7日間観賞できることを保証して切り花を販売するもので、購入者用の品質保持剤が添付されます(フラワーフードと呼ばれ、成分は抗菌剤と糖質が中心)。日持ち保証販売は、欧米では一般的なものとなり、我が国での普及が期待されています。農研機構 花き研究所は平成25年3月「日持ち保証に対応した切り花の品質管理マニュアル」を公表しました。この中では主な切り花30品目について、常温で5日以上の日持ち保証販売を可能とする処理方法を示しています。また、カラーやチューリップなどで新たな技術を示しています。切り花の日持ちにご関心のある方は是非一読ください。

日持ち保証5日 日持ち保証7日
切り花に添付する日持ち保証シール例

切り花の品質管理マニュアル マニュアル表紙