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日本茶の話

清々しい新茶の季節です。中国大陸原産のお茶は我が国でも独自の発展を遂げ、茶道のような伝統芸術としても、日常的な飲み物としても日本文化を特徴づけるアイテムとなっています。一方、お茶は製造方法の違いにより、「紅茶」、「半発酵茶(ウーロン茶など)」、「緑茶」など多様な香味の飲料として世界中で人々に好まれています。中でも紅茶は、世界中で取引される重要な貿易品目です。長い歴史の中でお茶をめぐる事情は大きく変化してきました。お茶の生産、製茶技術の改良と研究は日夜続けられており、今後の大きな変化につながることもあるかもしれません。今回は、日本茶に関するトピックスをご紹介します。

輸出拡大のための研究

緑茶は明治から昭和初期まで我が国の重要な輸出産品でしたが、経済発展と国内消費の増加、世界的な紅茶の生産地の拡大を背景に輸出量は減少し、戦後はわずかな水準になっていました。しかし、近年、世界各国で日本食ブームが起こり、日本茶の需要が増加しています。一方、日本茶の輸出を促進するためにはいくつかの課題もあります。国外では茶の香味に関する嗜好が日本人とは必ずしも一致しないこと、国内で安全に使用されている農薬が輸出先で登録されておらず輸出の障害になること、海外の日本茶の消費者層が有機栽培や無農薬栽培を求める傾向が強いことなどです。

病害虫に強い茶新品種 「なんめい

病害虫に強い茶新品種
「なんめい」

サイクロン式吸引洗浄装置

サイクロン式吸引洗浄装置

萎凋香緑茶の外観と水色

萎凋香緑茶の外観と水色


こうした課題に対応するため、農研機構野菜茶業研究所(野菜茶研)では他の研究機関や企業と共同でプロジェクト研究を行い、その結果を技術集としてとりまとめました。その中では、農薬が少なくてすむ病害虫に強い茶品種、化学農薬を使用しない場合の防除技術、新しい香味を持った緑茶「萎凋香緑茶(いちょうかりょくちゃ)」などを紹介しています。

水出し緑茶の健康機能性

水出し緑茶の健康機能性 お茶にはカテキン、ビタミンCなど、健康に役立つ機能性成分が多く含まれています。野菜茶研では、日常の「食」を通じた機能性の1つとして、緑茶の飲用による免疫機能の改善の可能性を探究していますが、最近、水出し緑茶の効果に関する興味深い成果が得られました。

緑茶カテキンの主要成分であるエピガロカテキンが白血球の1つであるマクロファージの食作用を活性化すること、その自然免疫系の活性化は、別の主要緑茶カテキンであるエピガロカテキンガレートにより弱められてしまうことがわかりました。さらに、茶葉を冷水で抽出することで免疫賦活活性が高いエピガロカテキンの割合の高い飲用茶が簡単に得られることがわかりました。野菜茶研ではこの水出し緑茶の健康機能性研究の実用化に向けた共同研究を実施しています。

茶業研修生が「全国手もみ製茶技術競技大会」で最優秀賞を受賞

最優秀賞受賞野菜茶研では、茶業の後継者や地域の指導者となりうる人材の養成を目的として研修生を募集し、2年間の研修を行っています。この研修制度は、農商務省時代の大正9年に創設されました。90有余年の歴史の中で、巣立っていった修了生は1,200名を超え、全国の茶産地で優れた茶業経営者、地域農業のリーダーとして、あるいは地方公共団体や農協などの茶業指導者として活躍しています。

研修の中では、製茶技術の基本である「手もみ」実習を行っていますが、平成24年11月に行われた第16回全国手もみ製茶技術競技大会に研修生チームが参加し、最優秀賞(1位)を受賞しました。