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日本育種学会賞W受賞

農研機構が育成した新品種である超強力小麦「ゆめちから」や、高温に強い極良食味の水稲品種「にこまる」「きぬむすめ」が全国で販売されるようになってきましたが、この度、これらを育成した農研機構の2つの研究グループが、平成25年度日本育種学会賞を受賞しました。日本育種学会は、品種改良に関する研究・技術の進歩等をはかることを目的として1951年に創設された日本学術会議登録団体です。日本育種学会賞は、本会の会員による優れた学術的あるいは技術的業績に対して授与される権威ある賞です。
今回は、これについてご紹介します。

受賞講演の様子(平成26年3月21日)

ゆめちから (平成21年品種登録)

受賞者

農研機構 北海道農業研究センター 超強力小麦「ゆめちから」育成グループ


「ゆめちから」の普及活動
その名の通り、力強い中にもやわらかさを感じる製パン性に優れた超強力小麦品種。強力粉より強い生地特性を持ち、従来の国産小麦とのブレンドでパンや中華麺に適した高品質な小麦粉が生産できます。北海道を中心に、栽培面積(平成26年産)は11,000haで拡大中。高い製パン品質が評価され「ゆめちから」の品種名を冠したパンも販売されています。需要が大きいパン用小麦は自給率が極めて低いことから、我が国の食料自給率向上への貢献が期待されています。超強力小麦と中力粉のブレンドでパン用小麦粉を作るという発想、育成当初からの製パン業者との連携が成功につながりました。

 

にこまる、きぬむすめ (平成20年品種登録)

受賞者

農研機構 九州沖縄農業研究センター 「にこまる」「きぬむすめ」育成グループ

「きぬむすめ」は「にこまる」の母親にあたり、双方とも西日本向けの水稲品種です。「コシヒカリ」等と比較しても、同等の良食味と5~10%上回る安定多収性、高温登熟耐性を持ち合わせています。 これらの特性は記録的猛暑であった平成22年の一等米比率の高さ、日本穀物検定協会の「米の食味ランキング」での「特A」評価など現場レベルで示されてきました。栽培面積(平成25年産:推定)は「にこまる」9,000ha、「きぬむすめ」12,000haで西日本を中心に拡大中。温暖化への適応と農家所得向上への貢献が期待されています。食味による選抜の重視、酷暑条件での玄米品質安定性評価、遮光処理を加えた高温登熟耐性の評価が成功につながりました。
「にこまる」育成研究者ら(稲育種用温室にて)

なお、上記の他、農研機構 北海道農業研究センターの「遺伝資源の発見から品種育成までを網羅したテンサイ黒根病抵抗性の遺伝・育種学的研究」が日本育種学会奨励賞を受賞しています。

皆様も「ゆめちから」や「にこまる」、「きぬむすめ」の製品を見かけたら手に取り、育成した研究者や生産者の努力があることを思い出してください。そしてぜひご賞味ください。農業研究成果が実を結び、農業生産の活性化につながるダブル効果が期待できることを願って。

 

ゆめちからと農林61号ブレンドのロールパン


「にこまる」「きぬむすめ」の店頭での販売