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国立科学博物館で「光る花」を展示

21世紀は光の世紀ともいわれています。先日、青色発光ダイオードの研究で日本人3名がノーベル物理学賞を受賞し、日本中が歓喜したばかりですが、こうした折、10月28日から国立科学博物館の特別展として「ヒカリ展-ヒカリのふしぎ、未知の輝きに迫る!」が開催されています。この「ヒカリ展」に、農研機構花き研究所がNECソリューションイノベータ株式会社、株式会社インプランタイノベーションズ及び国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学と共同で開発した光るトレニア(和名:夏スミレ)が、展示の目玉の一つとして展示されています。今回は、この「光る花」についてご紹介します。

 

研究成果の概要

shun20141107_01この光るトレニアは、海洋プランクトンの一種であるキリディウス・ポッペイの発光する遺伝子を、遺伝子組換えの技術を用いてトレニアに導入することで作出されました。こうした光る蛍光タンパク質としては、やはりノーベル賞を受賞した下村博士のオワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(GFP:Green fluorescent protein)が有名です。当研究グループでは、研究当初、このGFPをトレニアに導入し、「光る花」の作出を試みました。この場合、細胞レベルでは蛍光が観察されましたが、植物体レベルにおいては観賞可能な強度の蛍光が見られませんでした。

shun20141107_02その後、様々な試行錯誤の結果、キリディウス・ポッペイの遺伝子とタンパク質を植物で高蓄積させるための最新のバイオテクノロジーを組み合わせた技術により、遺伝子を トレニアに導入することで、蛍光タンパク質を多量に生産し、特に花器官で強い蛍光が見られる「光る花」の作出にたどりついたということです。この「光る花」は、ホタルのルシフェラーゼのように自律的には発光しませんが、青色発光ダイオードを光源とし、また、花と観察者との間のフィルターについても工夫を凝らすことで、写真のような黄緑色の蛍光色の花が長期間にわたって見られるようになりました。

 

今後の展望

現時点では、「光る花」の成功事例は、今回のトレニアのみですが、遺伝子組換えが可能な花(キク、ラン、バラなど)で、トレニアのように花色が白いものに応用が可能です。一方で、この「光る花」は遺伝子組換え植物のため、法律に基づき、国内に自生する野生植物等の多様性に影響がないことが確認されるまでは、屋内で厳重に管理する必要があります。このため、花き研究所では「光る花」をできるだけ早く多くの人に体験してもらうため、ドライフラワーや樹脂封入標本の開発を進めています。

この「ヒカリ展」は来年2月22日まで開催されています。できるだけ多くの皆様に、「光る花」を見ていただけると幸いです。

 

「光る花」(写真左)と、ヒカリ展での展示の写真(右)。

ヒカリ展では蛍光タンパク質が導入されていないトレニア(右奥;矢印)も併せて展示されている。