品種詳細

かんきつ中間母本農3号

「F.N.ワシントン」ネーブルオレンジと「マーコット」タンゴールの間で育成された種間細胞融合雑種で四倍体の品種です。果皮が厚く、弱いオレンジ香の、柔軟多汁で酸味の強いカンキツで、花粉稔性を有するため、育種素材として使用できます。

主要特性

  • 「F.N.ワシントン」ネーブルオレンジの珠心カルス由来のプロトプラストと「マーコット」タンゴール実生の葉肉由来のプロトプラストを融合して育成した体細胞雑種で、平成7年8月に「かんきつ中間母本農3号」として登録・公表されました。
  • 樹の大きさ樹勢ともに中。枝梢は太く、節間長は長い。枝梢に太く長いトゲが発生します。葉は緑色が濃く、幅が広いく、翼葉は小さいです。花弁は白色で幅がやや広く、めしべの発達が不完全な花も見られますが、正常な花では子房は球形で小さいです。花粉は充実しており、花粉量も多く、花粉稔性は84.1%で、発芽率は13.5%です。ネーブルオレンジは雄性不稔ですが、本中間母本は稔性を有します。開花期はオレンジとほぼ同時期で、育成地では5月中~下旬です。
  • 果実は130gで、果形は長球。果頂部が窪みます。果皮は黄橙色で、弱いオレンジ香を有しており、著しく厚くなっています。果面は粗く、剥皮は容易です。果肉は橙色で、柔軟多汁。果肉にも弱いオレンジ香があります。しかし、じょうのう膜に若干苦みがあります。12月中旬の分析では、果汁中の糖度は屈折計示度で13.4%と高いですが、クエン酸含量が1.78%と高く、成熟期は2月中・下旬と考えられます。種子は多胚性です。
  • 「サザンレッド」、クレメンティンなどとの交雑により三倍体実生が得られることを確認しています。

表1.「かんきつ中間母本農3号」の樹体、葉および花粉の特性

表2.「かんきつ中間母本農3号」の果実の特性

表3.「かんきつ中間母本農3号」を花粉親に用いた交雑による三倍体実生の作出

「かんきつ中間母本農3号」結実状況
結実状況

出願番号
(出願日)
公表日 登録番号
(登録日)
育成者権の存続期間
7751
(1995年3月31日)
5668
(1997年7月28日)
18年
(満了日:2015年7月28日)
交配組み合わせ 旧系統名
マーコット+F.N.ワシントンネーブル(細胞融合)

栽培適地

農林認定品種(旧:命名登録品種)

登録番号:かんきつ中間母本農3号

登録年月日:1995年8月1日

育成担当者

小林省蔵、生山 巖、中村ゆり、吉永勝一、(大河原敏文)、(石井茂孝)、(清水純一)、(斎藤 渉)
※()はキッコーマン

発表論文

    • Kobayashi S. et al. (1991) analysis of cytoplasmic genomes in somatic hybrids between navel orange (Citrus sinensis Osb.) and murcott tangor. Theor. appl. Genet. 82:6-10.
    • Kobayashi S. et al. (1995) Fruit characteristics and pollen fertility of citrus somatic hybrids. J. Japan. Soc. Hort. Sci. 64:283-289.