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第245回つくば病理談話会演題

480) 豚の延髄

  • 提出者(所属) : 服部 七星(埼玉県中央家畜保健衛生所)
  • 畜種 : 豚
  • 品種 : 雑種
  • 性別 : 去勢雄
  • 年齢 : 約4カ月齢
  • 死・殺の別 : 鑑定殺
  • 解剖日 : 2025年9月29日
  • 解剖場所 : 埼玉県中央家畜保健衛生所

発生状況及び臨床所見

一貫経営養豚場において、肥育豚1頭が2025年9月26日より斜頸を呈し、9月29日に起立不能となったため、病性鑑定を実施した。鑑定殺前には眼振が認められた。

病原検索

細菌学的検査では脳および右脳幹部膿スワブからTrueperella pyogenesが分離された。また、肺からMycoplasma hyopneumoniae特異的遺伝子が検出された。ウイルス学的検査では、PRRSウイルス特異的遺伝子が扁桃および鼠径リンパ節から検出された。豚サーコウイルス2型特異的遺伝子が脾臓、腎臓、肺、脳、扁桃、鼠径リンパ節から検出された。

剖検所見

右脳幹部周囲に緑黄色膿汁が付着していた。脳幹部右側面に瘻孔が3か所みられ、割面にて橋から延髄にかけて膿瘍が認められた。小脳の脳幹部付着部に1mm大の空洞がみられた。また、右鼓室に黄褐色膿様物が貯留していた。肺では前葉を中心に胸壁への癒着、肝変化および退縮不全がみられた。

組織所見(提出標本 : 延髄)

橋から延髄に首座し、一部小脳まで及ぶ膿瘍の形成が認められた。膿瘍内にはグラム陽性小桿菌の増殖がみられ、中心部は空洞化していた。膿瘍周囲はマクロファージ・リンパ球浸潤がみられ、一部で線維性結合組織による被包化がみられた。膿瘍周囲では脳実質の粗鬆化および囲管性細胞浸潤が認められた。膿瘍周囲髄膜ではリンパ球や好酸球浸潤がみられた。鼓室内には菌塊と変性した好中球を多量に入れ、粘膜固有層にリンパ球浸潤がみられた。肺では、リンパ球・マクロファージ浸潤によりびまん性に肺胞壁が肥厚していた。気管支周囲リンパ濾胞の過形成が散見され、小葉間結合組織および気管支周囲の線維化がみられた。一部の気管支及び肺胞内には好中球浸潤が認められた。

討議

脳膿瘍は中耳炎から波及したものと考察しています。本症例は慢性化した肺炎のような像がみられ、慢性疾病が中耳炎発症に関与した可能性が考えられましたが、類似症例のご経験がありましたらご教授ください。

診断

  • 組織診断 : 豚の延髄に形成されたTrueperella pyogenesによる脳膿瘍
  • 疾病診断 : 豚のTrueperella pyogenesによる脳膿瘍

481) 牛の喉頭

  • 提出者(所属) : 宮﨑 貴生(静岡県中部家畜保健衛生所)
  • 畜種 : 牛
  • 品種 : ホルスタイン種
  • 性別 : 雌
  • 年齢 : 42日齢
  • 死・殺の別 : 鑑定殺
  • 解剖日 : 2025年11月28日
  • 解剖場所 : 静岡県西部家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

飼養頭数約90頭の県内酪農農家において、2025年11月25日に子牛1頭で発熱(39.9°C)および喘鳴がみられた。25日にマルボフロキサシンおよびフルニキシンで治療するも症状は改善せず、26日にマルボシルとデキサメタゾンを投与した。27日に呼吸が若干改善するも、哺乳ができず、翌28日に予後不良と判断し、病性鑑定を実施した。なお、近隣のカーフハッチで飼養されている子牛に異常はみられなかった。

病原検索

解剖牛の主要臓器、気管スワブ、胸水、心嚢水から有意な菌は分離されなかった。解剖牛および同居牛の鼻腔スワブを用いたRSウイルス簡易検出キットは陰性であった。解剖牛の気管スワブから呼吸器関連ウイルスの特異遺伝子は検出されなかった。

血液検査

WBC 29,700/μl(顆粒球 24,400/μl、リンパ球 4,400/μl、好酸球 900/μl、単球 0/μl)、
RBC 941×104/μl、Ht 29.9%

剖検所見

喉頭の小角結節および声帯ヒダは発赤、腫脹し、喉頭腔の背側に顆粒状の結節がみられた。喉頭の矢状断面では、披裂軟骨と輪状軟骨間に乾酪様の黄白色物がみられた。また、気管支内腔に食渣のようなものがわずかにみられた。

組織所見(提出標本 : 喉頭)

披裂軟骨辺縁は壊死し、周囲には膿瘍が形成されていた。膿瘍中心部にはグラム陽性桿菌やフィラメント状のグラム陰性長桿菌の細菌塊がみられ、その周囲には変性した好中球が浸潤し、辺縁には線維素の析出や肉芽組織の形成を伴っていた。披裂軟骨および甲状軟骨間の固有喉頭筋では、筋線維の萎縮や筋間に重度の水腫、線維素の析出がみられ、血管壁の壊死や血栓形成、血管周囲への好中球、リンパ球、マクロファージといった炎症細胞の浸潤を伴っていた。解剖時にみられた顆粒状の結節は、表層を重層立方~円柱上皮に覆われ、上皮下には多数の毛細血管と線維芽細胞の増殖、好中球を主体とした炎症細胞の浸潤がみられ、創傷治癒における肉芽組織相を呈していた。

討議

本症例は喉頭背側の創傷から細菌が侵入して膿瘍を形成したと考えられる。膿瘍周囲の固有喉頭筋における水腫や線維素の析出は、病変部に集簇した炎症細胞由来のケミカルメディエーターによる血管透過性の亢進や、細菌の毒素による血管内皮傷害の結果であると考察しているが、その妥当性についてご教授頂きたい。

診断

  • 組織診断 : 牛の喉頭膿瘍および披裂軟骨壊死
  • 疾病診断 : 喉頭膿瘍