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第234回つくば病理談話会演題

452) 鶏の腎臓

  • 提出者(所属):島田 果歩(千葉県中央家畜保健衛生所)
  • 動物種:鶏
  • 品種:シェーバーブラウン
  • 性別:雌
  • 年齢:244日齢
  • 死・殺の別:鑑定殺
  • 解剖日:2023年8月7日
  • 解剖場所:千葉県中央家畜保健衛生所

発生状況及び臨床所見

約3,600羽規模の採卵鶏農場において、2023年6月中旬斃死が続発し産卵率の低下が認められた。通常産卵率は約70%~80%であるが、当該ロットでは約30%~40%であった。農場立入時には、沈うつ等の症状を示す鶏が散見された。

病原検索

ウイルス検査では気管及び腎臓から鶏伝染性気管支炎ウイルス(IBV)の特異遺伝子が検出された。発育鶏卵検査では分離されなかった。細菌検査において有意菌は分離されなかった。

剖検所見

左側腎臓は高度に腫大及び退色し、尿管内では尿酸塩の貯留が認められ拡張していた。右側腎臓は前葉の部位に白色固形物が少量認められ、中葉と後葉は欠損していた。

組織所見(提出標本:腎臓)

腎臓では、尿管は高度に尿酸塩が貯留し拡張していた。集合管は腔内に尿酸塩が貯留かつ高度に拡張し、上皮細胞の壊死、脱落、扁平化が認められ、一部は貯留物と癒着し、粘膜固有層には単核球、線維芽細胞の浸潤が認められた。高度に尿酸塩沈着が認められる部位では、皮質及び髄質の構造が不明瞭となり、尿細管は上皮の脱落、壊死、扁平化、拡張が認められ、間質は形質細胞、線維芽細胞、類上皮細胞浸潤、水腫により拡張していた。前葉は中葉、後葉に比較して病変形成が高度であった。気管及び喉頭では粘膜固有層において軽度のリンパ濾胞の増生、リンパ球浸潤が認められた。マウス抗IBV抗体(HyTest)を用いた免疫染色では、腎臓において尿細管上皮に少量、尿管及び集合管腔内貯留物に中等量の陽性反応が認められた。

討議

本症例はIBVにより腎臓が障害され、慢性経過をとることで尿酸塩が高度に貯留・沈着したものと考えています。また、慢性経過のために免疫染色では陽性反応が少量であり、ウイルスも分離されなかったと思われます。IBの腎炎型に遭遇したご経験のある方、尿酸塩の沈着程度や免疫染色の抗原量等について御教授願います。

診断

  • 組織診断:採卵鶏の鶏伝染性気管支炎ウイルスによる尿酸塩沈着を伴う尿細管間質性腎炎
  • 疾病診断:鶏伝染性気管支炎(腎炎型)

453) 鶏の頸部

  • 提出者(所属):中村 素直(JA全農 家畜衛生研究所)
  • 動物種:鶏
  • 品種:チャンキー
  • 性別:不明
  • 年齢:10日齢
  • 死・殺の別:屠殺
  • 解剖日:2023年9月8日
  • 解剖場所:農場

発生状況及び臨床所見

約11万羽を飼養する肉養鶏コマーシャル農場において、0から2日齢で給餌器に首が挟まる雛が散見され、7日齢頃から跛行や起立不能を呈す雛が増加した。管理獣医師が7日齢と10日齢で剖検を実施し、頸部捻転が認められた。10日齢で実施した雛について当研究所に頸部の病理検査を依頼した。本症例は当研究所に検査依頼があった4検体のうちの一例である。

病原検索

管理獣医師の診療施設で細菌検査を実施したが細菌は分離されなかった。当所では病原検索を実施していない。

剖検所見

頭部から頸部が背方向に屈曲していた。

組織所見(提出標本:頚部断面)

頸椎椎体と脊椎の硬膜の間に肉芽腫を形成していた。肉芽腫は線維芽細胞の間に多数のマクロファージ、類上皮細胞、多核巨細胞が浸潤し、偽好酸球、壊死退廃物からなる膿瘍を形成していた。肉芽腫は周囲の椎骨、項靭帯を侵襲し、骨膜の消失、類骨の形成、靭帯の変性、リンパ球、マクロファージ浸潤を認めた。周囲の筋組織では筋線維間での偽好酸球、マクロファージが浸潤し、線維芽細胞が増生していた。筋線維は限局性に筋線維が変性、壊死し、偽好酸球、マクロファージ、リンパ球が浸潤していた。肉芽腫付近の脊髄ではスフェロイド、ミクログリアの集簇、出血を認めた。グラム染色、PAS反応、グロコット染色、Ziehl-Neelsen染色を実施したが、病原微生物は観察されなかった。大脳、小脳に著変は認めなかった。

討議

頸椎に主座する肉芽腫性の炎症により靭帯の変性、頸椎関節の拘縮が生じて、頸部の屈曲として観察されたと考えました。しかしながら原因の特定には至りませんでした。このような病変形成に至った原因について知見をお持ちの方がいらっしゃいましたらご教授お願い致します。

診断

  • 組織診断:肉用鶏の頸部における限局性肉芽腫性骨膜炎、筋炎
  • 疾病診断:肉用鶏の頸部における肉芽腫性骨膜炎、筋炎