475) 牛の腸間膜リンパ節
- 提出者(所属) : 髙島 映令彩(群馬県中部家畜保健衛生所)
- 畜種 : 牛
- 品種 : ホルスタイン種
- 性別 : 雌
- 年齢 : 285日齢(2023年12月14日生)
- 死・殺の別 : 死亡
- 解剖日 : 2024年9月24日
- 解剖場所 : 群馬県中部家畜保健衛生所
発生状況及び臨床所見
乳用牛を年間約470頭受け入れる県内預託牧場に、当該牛が2024年7月18日に入牧した。同年9月21日に食欲不振を呈したため、抗生物質および非ステロイド系抗炎症薬により治療を行った。治療を続けるも症状は改善せず、9月24日の朝死亡発見され、同日午後、当所にて病性鑑定を実施した。
病原検索
細菌学的検査では、主要5臓器からMannheimia haemolyticaが分離された。肺および心臓由来菌株についてM. haemolytica血清型別PCRを実施したところ、血清型6型特異遺伝子が検出された。薬剤感受性試験の結果、ペニシリン、アモキシシリン、セファゾリン、テトラサイクリン等の複数の薬剤に抵抗性を示した。ウイルス学的検査では、肺から牛RSウイルス、牛パラインフルエンザウイルス3型および牛コロナウイルスの特異遺伝子は検出されず、肺を用いたウイルス分離検査は陰性だった。
剖検所見
肺は左右後葉の背側の一部を除き肝変化が認められ、胸膜面には線維素が析出していた。肝変化した肺の割面は暗赤色を呈し、小葉間結合組織は水腫性に拡張していた。気管は白色泡沫状物を容れ、粘膜は赤色を呈していた。気管気管支リンパ節、縦隔リンパ節は軽度に腫大し、胸腔は黄橙色混濁胸水を多量に容れ、肺胸膜、肋骨胸膜、心嚢および横隔膜は線維素の析出により癒着していた。心臓において心膜は線維素の析出により重度に肥厚し、黄褐色の心嚢水が中等量貯留していた。腸間膜リンパ節は中等度腫大していた。
組織所見(提出標本 : 腸間膜リンパ節)
腸間膜リンパ節では、リンパ洞において、燕麦細胞、線維素の析出および多数の細菌塊が認められ、リンパ洞は拡張し周辺組織には壊死が認められた。肺では、周囲を燕麦細胞に取り囲まれた凝固壊死巣を伴う線維素性化膿性気管支肺炎が認められ、凝固壊死巣には多数の細菌塊および線維素が認められた。肺の小葉間結合組織および胸膜には重度の線維素の析出が認められた。気管気管支リンパ節では、リンパ洞内に線維素の析出、マクロファージの軽度の浸潤および少数の細菌塊が認められた。肝臓では、細菌塊が散発的に認められ、周囲に変性した好中球が認められた。家兎抗M. haemolytica血清型6型抗体(動衛研)を用いた免疫組織化学的検査により、肺、肝臓、気管気管支リンパ節および腸間膜リンパ節において、細菌塊に一致して陽性反応が認められた。
討議
M. haemolyticaによる病変が腸間膜リンパ節に認められた症例を初めて経験しました。同様の症例についてご経験・知見がありましたら、ご教授ください。
診断
- 組織診断 : 牛の腸間膜リンパ節におけるMannheimia haemolytica 6型による壊死性化膿性炎
- 疾病診断 : 牛パスツレラ(マンヘミア)症
476) 牛の骨格筋
- 提出者(所属) : 中島 冬萌(長野県松本家畜保健衛生所)
- 畜種 : 牛
- 品種 : 交雑種
- 性別 : 雌
- 年齢 : 15ヶ月齢
- 死・殺の別 : 死亡
- 解剖日 : 2025年9月9日(死後約10時間)
- 解剖場所 : 長野県佐久家畜保健衛生所
発生状況および臨床所見
2025年8月28日、肉用牛223頭を飼養する肥育農場で交雑種の1頭が両後肢を前方に着地する姿勢を取り、すぐに横臥するようになった。同日から4日間、臨床獣医師により抗生剤が投与され、その後白筋症を疑い9月1日に亜セレン酸ナトリウム及びビタミンE合剤を投与された。9月7日から起立不能となり、9月9日朝死亡しているのを畜主が発見した。
病原検索
エライザ検査では牛伝染性リンパ腫ウイルス抗体陰性だった。
生化学的検査
8月29日に採材した血清を用いた検査では、ASTは709 U/L、LD(IFCC)は2352 U/L、CKは5034 U/Lと高値を示した。また、αトコフェロールは152.1μg/dL、セレンは67.2 ng/mL(参考範囲*:40~75)だった。
*獣医内科学大動物編
剖検所見
左右の大腿部骨格筋、胸最長筋など複数の骨格筋が不規則広範に褪色していた。骨格筋の褪色は右後肢で重度だった。右後肢の大内転筋、半膜様筋では膠様浸潤も認められた。心臓では心膜が一部横隔膜と癒着し、心外膜は軽度に褪色していた。右の腎臓に嚢胞が1個認められた。
組織所見(提出標本 : 大内転筋)
多数の筋束で筋線維の壊死および間質の重度のリンパ球浸潤が認められた。リンパ球は壊死した筋線維内に浸潤していた。構造が保たれた筋線維内に少数のリンパ球が侵入する像も散見された。一部の筋束は筋線維が消失し、線維性結合組織や少数の線維芽細胞と多数の毛細血管を含む疎な組織に置換されていた。免疫組織化学染色では浸潤したリンパ球の大半がCD3に陽性を示した。病変部には好塩基性の豊富な細胞質と1~2個の大型の核を有する細胞が散見された。
心臓では筋線維間にリンパ球様の細胞が軽度に浸潤していた。この細胞はときおりソラマメ型の核や2個の核を有していた。腎臓の嚢胞は1~4層の扁平~立方上皮細胞で内張りされていた。
討議
牛における非化膿性筋炎の報告は少数ですが、本症例の診断名として適切であるか、また同様の症例のご経験がありましたらご教授いただけますと幸いです。
診断
- 組織診断 : 牛の大内転筋の非化膿性筋炎
- 疾病診断 : 牛の非化膿性筋炎
477) 牛の切歯
- 提出者(所属) : 加藤 壮浩(東京都家畜保健衛生所)
- 畜種 : 牛
- 品種 : 交雑種
- 性別 : 雌
- 年齢 : 18日齢
- 死・殺の別 : 鑑定殺
- 解剖日 : 2025年11月20日
- 解剖場所 : 東京都家畜保健衛生所
発生状況および臨床所見
2025年11月20日、家畜診療獣医師から、外貌異状と起立不能を主訴とする子牛の病性鑑定依頼があった。上顎の歯床板及び下顎の中切歯に肉芽様または結節様異物が認められた。また、左後肢中足部が不整形を呈し、左後肢関節の可動性が消失していた。当該畜は2週間程度の早産で、母牛に分娩兆候はなかった。
病原検索
細菌検査では、口腔内病変部からTrueperella pyogenes、Pseudomonas属菌、Proteus mirabilisを分離。肺からEscherichia coli、Pseudomonas属菌を分離。肺膿瘍からTrueperella pyogenes、Escherichia coliを分離。その他膿瘍(胸部皮下、左前肢手根関節、左後肢骨離断部)からTrueperella pyogenes、Streptococcus uberisを分離。ウイルス検査では、牛呼吸器病症候群関連ウイルスのPCR検査を実施し、全て陰性。
剖検所見
削痩し、努力呼吸を呈していた。中切歯に相当する部位に硬組織はなく、肉芽様物が形成され、歯肉周囲に微小な結節様物が散在していた。歯床板の一部が潰瘍化し、潰瘍中心部に結節様物が複数形成されていた。左後肢中足骨において骨端軟骨の離断と離断面の膿瘍が認められた。その他、肺や咽喉頭部、胸部皮下、四肢関節部等に膿瘍が認められた。
組織所見(提出標本 : 切歯骨)
歯冠部には辺縁不整な歯髄様の疎線維性結合組織が認められた。同組織の広範に壊死や菌体、単核細胞が認められ、歯根部にかけて結合組織が高度に増生していた。歯根部表層では歯乳頭や疎線維性結合組織のほか、環状から管状の上皮様細胞や骨断片とともに星状の細胞が網目状に集積していた。歯根部深層では歯槽骨内に大型の膿瘍が認められ、単核細胞や線維芽細胞が取り囲んでいた。歯冠部の歯髄様組織や歯槽、歯根部の膿瘍においてグラム陽性球桿菌やグラム陰性桿菌が認められた。
討議
対側切歯を参照し、歯冠部組織は歯髄が壊死したものと考えました。母牛(検査未実施)由来の感染が疑われ、歯槽骨領域の病変形成に伴って歯牙組織が傷害されたと考えましたが推測の域を出ません。発生要因、病変形成等についてご助言いただければ幸いです。
診断
- 組織診断 : 子牛の切歯骨における骨髄膿瘍、歯髄壊疽及び化膿性根尖性歯周炎
- 疾病診断 : 多発性膿瘍