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第246回つくば病理談話会演題

482) 豚の皮膚

  • 提出者(所属) : 佐々木 駿(神奈川県県央家畜保健衛生所)
  • 畜種 : 豚
  • 品種 : ランドレース種
  • 性別 : 雌
  • 年齢 : 2~3カ月齢
  • 用途 : 肥育
  • 死・殺の別 : 鑑定殺
  • 解剖日 : 2025年7月8日
  • 解剖場所 : 神奈川県県央家畜保健衛生所

発生状況及び臨床所見

2025年7月8日に、県内農場において発育不良により廃用判断となった豚を当所にて解剖した。当該豚は胸部、腹部、鼠径部及び大腿部に褐色を呈した輪状の隆起が多数認められた。腹部では病変が特に顕著で、隆起同士が癒合し、モザイク状を呈していた。その他、下顎部及び背部にも小隆起が認められた。飼養者によると、皮膚病変は抗菌薬に反応せず、自然治癒するとのことであった。

病原検索

ポックスウイルスを標的としたPCR検査を実施中。

剖検所見

著変は認められなかった。

組織所見(提出標本 : 皮膚)

隆起部では、角質層に錯角化性角化亢進を認め、細胞退廃物、好酸球及び好中球の浸潤、好酸球を主体とした表皮内膿疱が認められた。角質層下層の細胞は重度の水腫変性を示し、一部の細胞質内には好酸性の顆粒状物が認められた。有棘層では有棘細胞が増生し、表皮突起が不規則性に真皮へ伸長する表皮過形成が認められた。真皮では血管内皮細胞が腫大し、血管周囲に水腫、好酸球及びリンパ球の浸潤が認められた。

討議

本症例では、角質層下層の細胞に重度の水腫変性および細胞質内に好酸性顆粒状物が認められたことから、豚痘との鑑別を要し、現在ポックスウイルスを標的としたPCR検査を実施中である。一方、腹部を中心とした輪状の隆起を特徴とする皮膚病変、好酸球浸潤、不規則性の表皮過形成などから、Porcine juvenile pustular psoriasiform dermatitis(豚の若齢性膿疱性乾癬様皮膚炎)を疑っている。水腫変性は豚の若齢性膿疱性乾癬様皮膚炎の典型的所見ではなく、本症例では炎症に伴う二次的変化であると考えたが、この解釈を含め診断の妥当性についてご教示いただきたい。また、類似症例のご経験がありましたらご教示いただきたい。

診断

  • 組織診断 : 好酸球を主体とした表皮内膿疱と角化細胞の水腫変性を伴う血管周囲性皮膚炎
  • 疾病診断 : 不明(Porcine juvenile pustular psoriasiform dermatitis (豚の若齢性膿疱性乾癬様皮膚炎)を疑う)

483) 豚の結腸

  • 提出者(所属) : 竹澤 詩穂(茨城県県北家畜保健衛生所)
  • 畜種 : 豚
  • 品種 : 不明
  • 性別 : 雄
  • 年齢 : 35日齢
  • 死・殺の別 : 鑑定殺
  • 解剖日 : 2025年8月5日
  • 解剖場所 : 茨城県県北家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

母豚210頭規模の一貫経営農場で、2024年秋から離乳舎に移動後1週間で子豚の発育不良が増加した。食欲はあるが削痩により背骨が浮き出て見え、被毛粗剛を呈し、死亡する個体が認められた。原因究明のため、2025年8月5日に生体(No.1~3)と同居豚5頭(No.4~8)の血液を病性鑑定に供した。提出症例はNo.1である。ワクチンは、豚サーコウイルス2型(PCV2)、豚熱(CSF)を接種し、飼料にはコリスチン、フロルフェニコールおよびチルミコシンを添加していた。

病原検索

ウイルス学的検査では、No.1、2および6からワクチン株由来のCSFウイルス、No.1~3、5、7および8から豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルス、No.1~6および8からPCV2遺伝子が検出された。

細菌学的検査ではNo.1および3の肺、肝臓、脾臓ならびにNo.3の空腸下部からSalmonella Choleraesuis(7:c:1,5)、No.1の肝臓および結腸からSalmonella Typhimurium(4:i:-)、No.2の空腸上部からStx2e、No.3の結腸からF18、Stx2e、StaおよびSTbの遺伝子を持つEscherichia coliが分離された。

剖検所見

搬入時、やや灰色を帯びた泥状便が認められた。No.1および2は顕著な削痩および被毛粗剛を呈し、被毛が汚れていた。No.1の耳の先端部は壊死していた。3頭全ての腹部皮膚に丘疹が認められ、No.1では後肢や肛門周囲および蹄部にも丘疹または潰瘍が認められた。また、左股関節で関節液が増量していた。No.1および3の肺では退縮不全が認められた。No.1は空腸中部に2か所の腸重積がみられ、結腸全域および盲腸の一部に偽膜形成が認められた。また、3頭に共通して回腸粘膜が肥厚し、腸管径は不均一であった。さらに、結腸から盲腸にかけて漿膜面に直径1~2mmの白色結節が散在し、結腸周囲のリンパ節は腫大していた。

組織所見(提出標本 : 結腸)

No.1の結腸では、一部の領域で線維素、細胞残渣および細菌塊からなる偽膜が形成され、粘膜は壊死し、消失していた。壊死部の粘膜下組織は線維芽細胞の増殖により肥厚し、リンパ球の浸潤および血管新生が認められた。漿膜面に認められた白色結節は、陰窩膿瘍であった。家兎抗サルモネラO4群血清(デンカ生研)を用いた免疫組織化学的染色(IHC)では、壊死部および陰窩膿瘍内の菌体に一致して陽性反応が認められた。回腸ではリンパ濾胞の過形成がみられ、一部の濾胞では好中球が浸潤および壊死がみられた。PCV2のin situ hybridization(ISH)では、胚中心に強いシグナルが認められた。皮膚の丘疹部では角化亢進が認められた。また、肛門周囲の潰瘍部では炎症細胞浸潤を伴う表皮の壊死がみられ、多数の細菌塊が認められた。肝臓では単核細胞の浸潤を主体とした巣状壊死が散在し、家兎抗サルモネラO7群血清(デンカ生研)を用いたIHCで陽性の菌体が確認された。肺では、リンパ球およびマクロファージの浸潤により肺胞壁が軽度~中等度に肥厚していた。マウス抗PRRSV抗体(RTI)を用いた免疫染色では、マクロファージに陽性反応が認められた。また、PCV2のISHではBALTや間質にシグナルが認められた。

討議

本症例では、PRRSウイルスおよびPCV2の重複感染により免疫機能が低下し、サルモネラの二次感染が発症した可能性が考えられた。特に離乳舎でオガ粉を敷料としていることが発生要因の一つとして疑われるが、オガ粉豚舎において、疾病を良好にコントロールしている事例があればご教示いただきたい。また、蹄部および皮膚の潰瘍形成についてもオガ粉との関連を疑っているが、同様の症例を経験された事例があればご助言願いたい。

診断

  • 組織診断 : Salmonella Typhimurium(4:i:-)抗原陽性菌を伴う壊死性線維素性結腸炎
  • 疾病診断 : サルモネラ症(豚)、豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)、豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)