国際活動

第1回「農業における土壌微生物を活用したクールアース」国際シンポジウムの開催

2021年3月1日(月曜日)、 NEDO・東北大学・農研機構共催の「農業における土壌微生物を活用したクールアース」国際シンポジウムがオンラインにより開催されました.

※ NEDO: 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構

NEDOのムーンショット(MS)型研究開発事業において、東北大学及び農研機構は2020年度より「資源循環の最適化による農地由来の温室効果ガスの排出削減」プロジェクトを開始しています。一方、EUの研究・イノベーション事業 Horizon 2020 においては、欧州共同プログラムSOILプロジェクト(EJP-SOIL)として、複数の土壌関連の研究プロジェクトを実施中です。本シンポジウムは、これらのプロジェクトの目標を共有するとともに、農地由来の温室効果ガスの排出削減に関する研究を先導する研究機関の最新の研究動向を紹介し、地球環境再生のために、持続可能な資源循環の実現による、地球温暖化問題の解決(クールアース)に向けた議論を行うために開催されました。参加者は27カ国から542人に及びました。

開会式では、MSプロジェクトのプロジェクトマネージャー(PM)である国立大学法人東北大学・南澤特任教授、フランス国立農業研究所(INRAE)のPhilippot博士からの開催挨拶に続き、MS型研究開発事業プログラムディレクター(PD)を務める公益財団法人地球環境産業技術研究機構の山地副理事長・研究所長、INRAEのSoussana副理事長、農研機構の久間理事長、東北大学の小谷理事より挨拶がなされました。 久間理事長からは、MSプロジェクトの中で農研機構が行っている取組についての紹介がなされるとともに、本シンポジウムによって研究者間の連携が強化されること、地球規模の課題解決に貢献することへの期待が述べられました。

その後、INRAE、スペイン農業研究所、東北大学、NEDO、農研機構の計7名の研究者から、MSプロジェクトやSOILプロジェクトで実施されている、植物や微生物の利用、土壌の管理等による温室効果ガス削減に関する最新の研究状況について講演がありました。それぞれの講演の後には、コメンテーターやZoomのQ&Aにより様々な質問がなされ、活発な意見交換が行われました。

NARO農業環境変動研究センター秋山ユニット長からは、従来の被覆肥料や硝化抑制剤によるN2O削減技術に加えて、MSプロジェクトにおいて実施する、N2O除去(N2OをN2まで還元させる)効果の高い根粒菌株(nosZ+/nosZ++)の接種など、農耕地におけるN2Oやメタンの新しい排出緩和策について発表がありました。この発表に対しては、非常に多くの質問が寄せられました。そのなかで、温室効果ガス削減技術の普及の促進にはどのようにしたらよいかという質問に対して、秋山ユニット長からカーボンクレジット制度等のインセンティブが必要であるとの回答がありました。

最後の総括では、東北大学の南澤教授から、本シンポジウムを起点として、MSとEJP-SOILのような大型プロジェクトを通して相互の連携強化を推進することにより、気候変動の影響緩和等地球規模の問題解決に向けて貢献することへの期待が表明されました。

また、INRAEからは、NARO-INRAE間の研究者の相互交流プログラムであるジョイント・リンケージ・コール(JLC)についても紹介がありました。

挨拶をする久間理事長(農研機構)
プレゼンテーションを行う秋山ユニット長(農研機構)