このたび、農研機構の理事長に就任いたしました。
農研機構は、我が国の農業・食品分野における中核的な研究開発機関として、長年にわたり、現場に根ざした研究と技術開発を通じて社会に貢献してきました。その重責を担う立場として、身の引き締まる思いでおります。
現在、我が国の農業・食品産業は、農業従事者の減少や高齢化、気候変動の進行、国際情勢の不確実性の高まりなど、かつてない構造的な課題に直面しています。一方で、日本の農産物・食品は高い品質と安全性を背景に、海外市場での評価を着実に高めており、バイオテクノロジーやデジタル技術の進展は、新たな産業や価値創出の可能性を広げています。こうした危機と機会が併存する時代において、農研機構の果たすべき役割は、これまで以上に大きくなっています。
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第6期は、「食料・農業・自然資本を安全保障・産業創出の中核に」をスローガンとして、食料安全保障と食料自給力の向上、開発技術の国内外への展開、農産物・食品の輸出拡大と新産業の創出、そして事業性確保と環境保全の両立を目指し、政策課題に沿った研究開発と社会実装を着実に進めるとともに、産官学連携のハブとしての機能を強化し、限られた研究リソースを最大限に生かすことで、基礎から応用に至るまでハイインパクトな成果の創出を目指します。
私自身、これまでの研究・大学運営の経験を通じて、明確なビジョンに基づくマネジメントと、研究成果を社会に定着させる「事業性」の視点を重視してきました。優れた研究成果であっても、社会に実装され、持続的に活用されてこそ真の価値を持ちます。すなわち、研究の価値は個々の成果を誰でも使える形に整理・体系化する「構造化」と誰にでもわかるようにする「翻訳」によって、現場、企業、政策が動ける形にすることで決まります。農研機構は構造化した知識「構造知」を翻訳し、社会へつなぎ、変革を生みだしていく所存です。
その基盤となるのは「人」です。多様な人材が互いの強みを生かし、共通のビジョンとスピード感をもって挑戦し、価値を生み出せる組織づくりを進め、役職員が一体となって、次の時代の農業・食品産業を切り拓いていきたいと考えています。
農研機構へのご理解とご支援を、今後ともよろしくお願い申し上げます。