中日本農業研究センター

所長室より -就任ご挨拶-

農研機構は、4法人の統合を経て、新たな農研機構として第4期中長期計画期間への一歩を踏み出しました。その中で中央農研は、名称を「中央農業研究センター」と変更するとともに、農研機構のフロントラインとして、関東東海北陸地域の農業が抱える課題の解決に取り組み、その成果を広く普及させていくという大きな役割を担うことになりました。
わが国の農業は、少子高齢化社会のもとで労働力が大きく減少していることから、構造変化が急速に進んでいます。農業・農業経営を取り巻く環境も大きく変化してきています。特に、私たちが対象とする関東東海北陸地域は、大都市圏に近く農地流動化も進展していることから大規模経営が多く形成されており、私たちが開発する新たな技術体系の受け皿となる先進的な農業経営者も多数おられます。そのため、それら農業者や消費者の皆さんの期待に応えうる技術や知見を提供していくことが急務の課題となっています。
今回の組織再編で、研究所の名称から「総合」という言葉がなくなりました。しかし、私たちは、総合研究はもはや必要ではないと判断したわけではありません。中央農研では、これまで、出前技術指導や現地実証研究など営農現場に出向いての研究を進める中で、自ずと総合研究としての取り組みがなされるようになりました。むしろ、今後重視すべきことは、総合研究の推進を通して実際の営農場面や社会に意義のある成果をもたらすこと、すなわち、アウトカムを創出していくことにあると思います。その意味では、中央農研として、まさに総合研究の真価が問われる段階に入ったと考えています。
また、農業における国際競争力強化の必要性が指摘されていますが、これに対しても、従来のようなわが国の土地条件の零細性を理由にした内向きの議論に陥るのではなく、世界の流れに取り残されないよう、改めて、生産力の向上に向けた技術水準の高度化を図っていく必要があると思います。
私たちは、食料という国民にとって不可欠な財が将来にわたって安定的に供給されるための技術的基盤を提供していくという大きな社会的責任を負っています。技術の受け手となる農業経営者に対して、経営発展を支える有益な知見を提供していくことが、今、求められています。 これからも中央農研に対して一層のご支援、ご協力を賜りますよう、どうかよろしくお願い致します。

中央農業研究センター
所長 梅本 雅