中日本農業研究センター

所長室より --農業法人における人材育成のポイントを刊行(その2)-(作業別責任者制度)--

前回の「所長室より」では、マネジメント技術プロジェクトが公開しているパンフレット「農業法人における人材育成のポイント」(https://fmrp.dc.affrc.go.jp/publish/management/HRD_Point/)の要点を述べましたが、今回からは3回に分けて、そのパンフレットで記載されている様々な取り組み事例について具体的に紹介します。
人材育成における対応として、担当者に責任と権限を委ねるというものがありました。これについて、例えば、新潟県の山波農場では、従来は当時の代表(現経営者の父)がトップダウンで作業指示を出していく体制となっていて、従業員は指示をただ待つという状態が常態化していたという反省から、「作業別責任者制度」を導入しました。
この制度は、水稲作の作業を図に示すような23の工程に分解し、それぞれの工程ごとに責任者を決め、その責任者は、自分が担当する作業について、作業の段取り、人員配置、資材・機械の使用に関する計画立案についての責任を持ち、全員(社長も含む)がその責任者の指示に従って作業を実施していくという仕組みです。具体的には、毎朝の朝礼の時に責任者が、使用する機械や資材、班編成、作業する圃場の順番、労働安全上の留意点を説明し、作業に入ります。
この作業別の責任者は、原則、毎年入れ替えることとし、11月に翌年度の担当作業がトップダウンで決まります。そのため、従業員は、どの作業の責任者を任されても対応できるよう、栽培期間中は他の作業にも関心を払うようになります。
機械のオペレータの指名も併せて行われますが、オペレータは特定の人に限定しないよう分散させています。そのため、女性が田植機をオペレータとして操作することも生じますが、その際は、例えば、通常20kgの肥料袋ではなく、特注の10kg袋を使用するといった対応をとっています。
さらに、図に示した23の作業は難易度が5段階に区分されており(図参照)、難易度の高い作業を担当した場合には給与を上げることで、従業員の能力向上への動機付けを図っています。
山波農場では、入社1年目は代表や先輩社員について作業を一通り経験しますが、2年目からはいずれかの責任者を任せる方針としています。その際は、1人で悩まずアドバイスをもらうことを推奨しており、周囲の支援体制の構築も併せて図っています。
水田作経営では、このような人材育成対策を進めるに当たって地域別に責任担当制をとるケースがよく見られます。この山波農場でもエリア別の責任者の配置も検討されたそうですが、この方式だとエリア間で商品の品質にバラツキが生じる可能性があり、会社として商品の均質性を保つために、作業別責任者制度を採用したとのことです。
なお、本成果の内容について詳しくは、上記のパンフレットを参照して下さい。

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(注) 「農業法人における人材育成のポイント」
(https://fmrp.dc.affrc.go.jp/publish/management/HRD_Point/)より引用。