中日本農業研究センター

所長室より --北陸拠点「食と農の科学教室」の開催--

中央農業研究センター北陸拠点では、平成元年から「食と農の科学教室」を開催しています。これは、当初は「科学技術週間」に対応する形で「科学教室」としてスタートした企画ですが、その後何度か見直しを図りながら、田植終了後の6~7月の開催とする、水稲品種展示圃場を整備して北陸拠点で育成した品種や国内の主要品種、外国の品種などを栽培し、いつでも圃場を見学できるようにする、また、平成23年からは、「食育」を意識した取り組みとするといった改善を図って、今日に至っています。
具体的な実施内容としては、現在、学校の授業として農業や米作りを学習する小学校5年生を対象に2時間程度のプログラムとしており、1)稲や米の解説、2)特性の異なる米の食べ比べ、3)脱穀・籾摺り体験、4)圃場での水稲観察や農業機械の見学というように、座学だけでなく、実際に体験することを重視した内容となっています。参加校は、上越市内が中心ですが、隣接する妙高市(旧妙高村や妙高高原町)からの参加も多く、年によっては十日町市などからの参加もあります。
この「食と農の科学教室」の様子を下の図に紹介しています。いずれも、子供達がいろいろなことに関心を示し、積極的に質問をしたり、作業の体験を楽しんでいることが分かります。
北陸拠点は新潟県の上越市に所在しており、周辺には水田も多い地域です。しかし、それは一つの風景となってしまっているのが現状であり、その水田にある水稲が籾を稔らせ、それが脱穀、精米されて、毎日食べている米になるということも、子供達にとっては新たな発見と言えるかもしれません。また、実際にコンバインに乗ってみるのも楽しい経験となっているようです。
北陸拠点のこの取り組みは29年に及びますが、この間、参加校は延べ369校、参加者数も延べ12,924名に達しており、このように多くの子供達に参加してもらってきました。いずれは、この子供達が親となり、その子供達がこの「食と農の科学教室」に参画して、親子で共通の話題となるということにもなるかもしれません。
私達は、新しい技術や品種を開発し、それらを生産現場の農業者の皆さんや実需者の方々に届けていくという取り組みを進めていますが、それらと併せて、地域の人々、特に、地域の将来を担う子供達に、農業や作物について、また、農業に関わる科学的な知識について広く知ってもらうこともまた重要であると考えています。つくば地区では、農研機構「夏休み公開」として、7月末の土曜日に地域の子供達を対象にいろいろなことを体験し、学んでもらうという取り組みを行っていますが、このような活動を今後も継続していきたいと思います。

北陸拠点「食と農の科学教室」の開催状況

上越市内の小学校5年生を対象として実施。全員で、お米と稲作についての説明(30分)を聞いた後に、1農業機械と圃場見学、2展示館見学、3脱穀、籾すり体験を行っています。

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全員で説明を聞きます。市内6つの小学校が集まっています。
質疑では、たくさんの手があがり、「有機栽培のメリット、デメリットは?」という質問もでてきました。

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ここから、3つのグループに分かれてます。荒井産学連携コーディネーターのグループは、最初に農業機械の説明を聞きます。「乗ってもいいですよ」の声がかかると、あっという間に「乗車待ち」になりました。

hokurikukansatu.pngほ場の観察をします。北陸育成品種の他にも、たくさんの珍しい品種が植えられています。
室内に戻って展示館見学です。ここでも、熱心に質問をする子が後を絶ちません。

hokurikusennbakogi.png100均のケースとクシで作った「千歯扱き」、お手製の紙で作った唐箕等で、体験をします。
籾すりは意外に力がいるので、一生懸命です。「まだ?」「もう少し」と、児童同士で教え合ったりします。

hokurikusenbetukai.png選別をします。米だけが落ちてくるのを真剣に見ています。
最後は精米です。精米器の様子に興味津々です。手前のビデオカメラは、地元のケーブルテレビの取材です。

(2017年6月29日に開催した「食と農の科学教室」の状況。中央農研・産学連携室・谷脇広報チーム長の記録)