中日本農業研究センター

所長室より - 所長就任にあたって-

中日本農業研究センター 所長 中村 ゆり

令和3年4月1日付で農研機構中日本農業研究センターの所長を拝命しました。就任にあたり、一言ご挨拶申し上げます。

中日本農業研究センターは、関東、東海、北陸地域農業を支える地域特有の技術開発に特化した組織として、旧中央農業研究センターの地域対応研究分野を再編して発足しました。旧中央農業研究センターにおいては、地域対応研究分野以外にも多くの専門分野がありましたが、令和3年4月にスタートした農研機構の第5期中長期計画に沿って、病害虫研究分野および雑草研究分野は新たに発足した植物防疫研究部門に、土壌肥料研究分野は農業環境研究部門に、鳥獣害研究分野および飼養管理研究分野は畜産研究部門へ集約されました。

中日本農研が担当する関東、東海、北陸地域は、農業産出額が全国の34.5%を占め、我が国の食料生産において極めて重要な役割を担っております(令和元年農林水産統計)。特に、関東および東海地域は、首都圏や名古屋、大阪などの大消費地に近接し、消費者からの高品質な農産物、特に生鮮野菜の安定供給に対する期待が大きい地域です。また、国産の大豆や麦類の生産量が多い地域でもありますが、高温多湿な我が国においては大豆や麦類の収量確保等に多くの課題が残されています。米どころとして有名な北陸地域は、米関連産業が多く立地し米輸出が活発に取り組まれているものの、さらなる輸出拡大のためには大幅なコスト低減による国際競争力の強化が必要です。また、米の消費低迷が続く状況において、麦類・大豆・園芸作物の導入による収益性の向上が課題となっています。一方では、我が国の他の地域同様、農業者の高齢化と後継者不足から農業経営体数が減少するとともに、経営耕地面積の減少も続いており、収益性が高く、かつ省力的で魅力ある農業を実現する技術が求められています。

中日本農業研究センターにおいては、このような関東、東海、北陸地域の農業ならびに農業経営が抱える様々な課題を研究開発によって解決し、地域農業の発展に貢献したいと考えています。そのため、第5期中長期計画においては、都市近郊地域におけるスマート生産・流通システムの構築を目指し、都市近郊における高鮮度・高品質野菜のジャストインタイム生産・流通システムの実現、水田長期畑輪作におけるデータ駆動型畑作物複合経営の構築、湿潤気象・重粘土壌に適合した排水対策や作付け最適化による高収益輪作体系の構築と輸出拡大に向けた研究開発に取り組んでまいります。

農研機構は、研究開発を通して国民にとって不可欠な農産物・食品の安定供給に貢献するという社会的責務を負っております。中日本農業研究センターは、これまでに培った行政部局、都県組織、民間企業、生産者等とのネットワークを活かして、全職員が一丸となって、研究成果の創出と速やかな社会実装に取り組んでまいりますので、一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

令和3年4月
農研機構 中日本農業研究センター
所長 中村 ゆり