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対象家畜蜜蜂
特徴

腐蛆(ふそ)病は、蜜蜂の蜂児の細菌感染症で、家畜伝染病予防法で家畜伝染病に指定されている。死んだ幼虫や蛹(さなぎ)が腐るという共通の症状のため、法律ではまとめて腐蛆病と呼ばれているが、この病気にはアメリカ腐蛆病とヨーロッパ腐蛆病という原因菌の異なる二つの病気が含まれる。
アメリカ腐蛆病は、グラム陽性の有芽胞桿菌であるアメリカ腐蛆病菌(Paenibacillus larvae)によって引き起こされる病気である。若齢幼虫がアメリカ腐蛆病菌の芽胞に汚染された餌を食べることによって感染する。感染幼虫は、蛹になるために幼虫の部屋(巣房)に蓋がされた後に死ぬことが多い。
死んだ幼虫はアメリカ腐蛆病菌が作るたんぱく質分解酵素の働きで分解され、次第に茶色~チョコレート色になり、爪楊枝や綿棒などを巣房に差し込むと糸を引いて付いてくる粘稠(ねんちょう)性のある腐蛆となる。また、発症蜂群では、巣房の蓋は黒ずみ、張りを失って内側にへこみ、働き蜂に開けられた小孔がみられるようになり、刺激臭(膠臭、納豆臭)が漂うようになる。
一方、ヨーロッパ腐蛆病は、グラム陽性槍先状レンサ球菌のヨーロッパ腐蛆病菌(Melissococcus plutonius)によって引き起こされる。こちらも菌に汚染された餌を幼虫が食べることによって感染するが、発症はアメリカ腐蛆病より早く、巣房に蓋が掛けられる前に死ぬことが多い。死んだ幼虫は通常は働き蜂によって巣から排除されるが、排除されない場合は乳酸菌などの二次感染菌の影響で変性・分解され、張りがなくなり、乳白色~褐色の水っぽい腐蛆となって、酸臭を発することがある。
どちらの菌も人への感染はない。しかし、アメリカ腐蛆病が発生した場合、抵抗性の強い芽胞が周辺の土壌や巣に残るため、その後の飼養には注意を要する。
対策
海外では抗生物質による治療が行われることもあるが、日本で発生した場合、発生蜂群は焼却処分される。アメリカ腐蛆病の予防には、タイロシンという抗生物質も利用できるが、蜂蜜に抗生物質が残留しないように用法・用量を守って使用する必要がある。
[写真:アメリカ腐蛆病に侵された蜜蜂の巣]
動物衛生研究部門 : 高松大輔、岡本真理子
参考情報
- 家畜の監視伝染病 腐蛆病
情報公開日 : 「家畜疾病図鑑」『日本農業新聞』 2012年5月30日、14面に掲載
情報更新日 : 2024年11月18日