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アフリカ馬疫輸入牛の飼育時に注意

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対象家畜

特徴

アフリカ馬疫

アフリカ馬疫は、レオウイルス科のオルビウイルスが原因となり、ヌカカなどの吸血昆虫を介してウマ科の動物に伝播する家畜伝染病である。常在地は、アフリカ大陸のサハラ砂漠以南に限られるが、吸血昆虫や感染動物の移動などにより、地中海沿岸、中近東からインド、そしてスペインやポルトガルでも流行したことがある。2020年にタイで発生が確認された。南アフリカから輸入したシマウマが感染源である可能性が指摘されている。わが国では、これまで発生がない。

馬が初めて感染した場合、または病原性の高いウイルス株が感染した場合は、重度の肺炎を呈して95%以上の致死率を示す(肺型)。馬が以前に感染した経験を持つ場合、または病原性の低いウイルス株が感染した場合は、発熱の後に眼上窩など各所に浮腫が広がり、50%程度が死に至る(浮腫・心臓型)。

個体によっては、肺炎症状と浮腫・心臓型症状の両方を示す混合型の症状も見られ、高致死率を示す。一方、血清型の異なるウイルス感染歴を有する馬、もしくはロバやシマウマに感染した場合には発熱のみを示して致死率は低い(発熱型)が、血中にウイルスを保有しているため感染源となる。発熱型は疾病が常在するアフリカで多く観察される。

対策

アフリカ馬疫の伝播には必ず吸血昆虫が介在するため、それらの防除あるいは駆除が有効な予防策となる。常在地では弱毒生ワクチンや不活化ワクチンの使用が可能であるが、清浄国ではワクチン接種馬にウイルス血症が起こる可能性や、抗体陽性となって感染馬との区別ができなくなることから推奨されない。

海外からの侵入防止が重要で、検疫では特に症状の顕著でない浮腫・心臓型および発熱型に注意する必要がある。本病には有効な治療法はない。発生した際には早期の摘発・淘汰が重要である。

[写真:死亡した馬。鼻から白色泡沫状の気管内容物が出ている(上)、健常時には眼上窩が窪んでいるが(下左)、浮腫時には窪みがなくなる(下右)(Plum Island Animal Disease Center (アメリカ農務省) 提供)]

動物衛生研究部門 : 西達也

参考情報


情報公開日 : 2018年7月11日
情報更新日 : 2021年3月15日