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対象家畜馬
特徴

馬ウイルス性動脈炎は届出伝染病に指定される馬属特有の疾病である。本病はRNAウイルスであるアルテリウイルス科馬動脈炎ウイルスによって引き起こされる。欧米諸国で発生が確認されている一方、我が国での発生は確認されていない。ウイルスは鼻汁などに排出され、感染馬との接触感染ないし感染馬からの飛沫感染により伝播する。また、感染種牡馬との交尾やウイルスを含む精液を用いた人工授精により繁殖牝馬が感染することが知られている。
臨床症状は多様で、発熱、元気消失、食欲不振、下痢といった症状に加え、眼結膜の充血(馬のピンクアイ)、後肢の下脚部冷性浮腫、下顎リンパ節の腫大、発疹、陰嚢腫大なども認められる。不顕性感染も多い。妊娠馬が感染すると高い確率で流産する。一般に発症後二週間ほどで回復するが、若馬では劇症化し死に至ることもある。牡馬はウイルスが生殖器に持続感染することで、精液中に長期間ウイルスを排出するキャリアーとなりうる。肉眼的変化として、全身の点状出血や水腫、胸腹水の貯留が認められる。組織学的変化としては、小動脈中膜におけるウイルスの増殖に伴う炎症と、血管壁の変性ないし壊死が特徴である。
対策
有効な治療方法は存在せず、対症療法を行う。発生した場合、感染個体を直ちに他の個体から隔離し、馬房を消毒することが大切である。
キャリアーとなっている種牡馬が症状を呈さないことも多く、新たに導入する種牡馬から精液を採取しウイルス分離検査を行うことでウイルスの侵入を防止する。キャリアーとなることを防ぐために、欧米諸国では弱毒生ワクチンもしくは不活化ワクチンが種牡馬に対して接種されている。我が国は不測の事態に備え不活化ワクチンを備蓄しているが、現在に至るまで使用されたことはない。
わが国の検疫において、ワクチン接種歴のある種牡馬を除いたすべての輸入対象馬に対し本病の抗体検査が行われる。抗体陰性となった馬のみ輸入が許可される。
[写真:動脈中膜の炎症と変性壊死(原図:JRA総研)]
動物衛生研究部門 : 中山ももこ
参考情報
- 家畜の監視伝染病 馬ウイルス性動脈炎
情報公開日 : 2019年6月27日