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豚赤痢迅速診断、予防が重要

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対象家畜豚、いのしし

特徴

豚赤痢

豚赤痢はブラキスピラ・ハイオディセンテリアエというらせん状の細菌が病原で、下痢を特徴とする病気。豚やいのししの届出伝染病だ。現在は世界中の豚生産国で発生し、品種、性別に関係なく、離乳後の豚に好発する。

国内では1960年代から発生、今も多数の発生が報告されている。保菌豚の導入が主な発生原因となり、一度発生すると常在化しやすいので注意が必要だ。菌を含んだふん便を直接、または間接的に口から摂取することで感染する。潜伏期間は1、2週間で発症率は高い。

下痢の程度は、感染初期には黄灰色軟便から泥状便、次いで悪臭のある粘液・血液の混じった粘血下痢便へ変化する。感染豚は元気消失、食欲低下、脱水、体重減少、発育遅延を起こし、死亡することもある。下痢の原因は多種にわたることから発生時には迅速な診断が不可欠だ。

対策

ワクチンはない。予防対策が重要で、消毒などの一般衛生管理に加えて、発生農場から豚の導入を控える。導入豚は3週間は隔離飼育し健康状態を確認することなどが必要だ。オールイン・オールアウト方式も常在化防止に役立つ。

治療には、チアムリン、バルネムリン、リンコマイシン、タイロシン、デルデカマイシンの薬剤が使用されている。

[写真:豚赤痢菌の顕微鏡写真。菌はらせん状を示す。上は光学顕微鏡、下は走査電子顕微鏡]

動物衛生研究部門 : 江口正浩

参考情報


情報公開日 : 「家畜疾病図鑑」『日本農業新聞』 2014年3月19日、16面に掲載