動物衛生研究部門

家畜の監視伝染病タイトル

豚水疱症 (swine vesicular disease)

  • 鹿
  • めん羊・山羊
  • その他・家きん
  • 蜜蜂
  • その他・家畜

対象家畜 :豚、いのしし

1. 原因

ピコルナウイルス科(Picornaviridae)エンテロウイルス属(Enterovirus)豚水疱症ウイルス(Swine vesicular disease virus)。ゲノムは単鎖の+RNAで感染性がある。血清型は単一。自然環境下でウイルスは強い抵抗性を持つ(熱・pH変化)。人のコクサッキーウイルスB5と遺伝子構造が酷似し、抗原性が交差する。

2. 疫学

豚のみに発生する。1966年にイタリアで最初の発生を確認。70年には香港で発生。70年代に入るとヨーロッパ全域に拡大。1973年、1975年には日本でも発生。1973年の日本での発生調査では調査した豚の46%が臨床症状を呈し、汚染豚舎の豚の約80%が高い中和抗体価を示した。2000年以降もイタリア、ポルトガルで発生。散発的発生と大きな流行とがあるが全頭が発症することはない。病変部に大量のウイルスを含み、経口、経鼻、創傷感染で伝播する。不顕性感染し、キャリア動物は糞便中にウイルスを排出する。発生に季節的なものはないが冬に多い傾向にある。厨芥養豚で拡散した経緯がある。

3. 臨床症状

四肢の水疱形成に伴う跛行と一過性軽度の発熱。直接の原因で死亡することは無い。水疱は、四肢蹄冠部に好発。その他趾間部、副蹄基根部、四肢の皮膚。口唇部内外面、鼻鏡に形成することもある。

4. 病理学的変化

肉眼病変は、四肢、鼻口唇部の水疱。水疱は短期間で破れ、潰瘍、糜爛、痂皮形成する。病変は、口蹄疫と区別が付かない(口蹄疫参照)。

5. 病原学的検査

発症例の水疱液または水疱上皮乳剤を材料とし、IBRS-2細胞(豚腎由来培養細胞)に接種によるウイルス分離検査を実施する。同時に抗原検出ELISA、RT-PCRにより口蹄疫との類症鑑別を実施する。

6. 抗体検査

中和試験。清浄群でもまれに単独の抗体陽性個体(シングルトンリアクター)が認められることがある。

7. 予防・治療

摘発淘汰を基本とする。

8. 発生情報

監視伝染病の発生状況(農林水産省)

9. 参考情報

獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)

写真1 : 豚水疱症ウイルスの電顕写真(原図 : 元動物衛生研究所、白井淳資氏)

写真2 : 鼻鏡の水疱(原図 : 元動物衛生研究所、白井淳資氏)

写真3 : 蹄の水疱(原図 : 元動物衛生研究所、白井淳資氏)


編集 : 動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)