動物とヒトの間で伝播可能な人獣共通感染症はすべての感染症の半数以上を占めると言われており、ヒト、動物、環境の各分野が連携して衛生対策に取り組む「ワンヘルス」の考え方が世界的に広がっています。病原性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクターなどの腸管病原菌は、食品媒介性感染症(細菌性食中毒)を起こすことに加え、近年では薬剤耐性の伝播も問題視されており、ワンヘルスの観点からの対策が求められています。
腸管病原菌グループでは、家畜における腸管病原菌の浸潤拡大を防ぐため、病原性大腸菌やサルモネラについて大規模なゲノム解析を行い、病原性や薬剤耐性の伝播による菌の進化を明らかにし、流行株や高リスク群を同定する技術を開発しています。また、安全な食肉の生産に向けて、家畜の腸管からカンピロバクターを排除するための技術開発にも挑戦しています。
このような動物に関する研究の他にも、当グループでは、農場における抗菌剤使用量低減の影響評価や農場周辺環境中の薬剤耐性菌(耐性遺伝子)の解析など、ワンヘルスに関する課題にも取り組んでいます。また、腸管病原菌の防疫活動をサポートするための病性鑑定や野外調査協力も行っています。