ポイント
- 農研機構はNARO S.マルチの導入時における資材のリストアップや園地の排水性・土壌流亡リスク診断および導入後のAI灌水適期判断機能をコンテンツとしたwebアプリケーションを開発、公開しました。
- 本アプリはiPhoneで使用可能で、使用するためにはアカウント発行が必要です。
概要
農研機構は、戦略的スマート農業技術等の開発・改良「カンキツ輸出に向けた高糖度果実安定生産技術と鮮度保持技術の確立」(JPJ011397)の課題として、株式会社ヘッドウォータースと共同で「シールディング・マルチ栽培(NARO S.マルチ)※1」(以下、S.マルチ)の管理導入支援アプリを開発・公開しました。
農研機構で開発したS.マルチは温州ミカン等において、樹体に適度な乾燥ストレス※2を付与することで安定的に高品質果実を生産するための技術です。この技術の導入には排水設計の事前診断が望ましく、専用資材等の購入・施工が必要です。また、導入後は気象や土壌の状況に応じて灌水が必要となり、その判断が重要となります。そこで、これらの導入・管理に関わる作業を支援することを目的として、生産者向けスマートフォン用アプリを開発しました。
本アプリにはS.マルチの導入を支援する資材リストアップ機能、園地の排水性診断機能、土壌流亡リスクの診断機能、およびS.マルチの導入後のAI灌水適期判断機能※3を搭載しました。本アプリはwebアプリケーション※4として開発しており、複数アカウントで果実の成長状況を共有することも可能です。
使用を希望される方は以下URLまたはQRコード※5からアカウント発行申請を行ってください。
https://forms.office.com/r/XX9aPrpaJF

なお、本アプリは無料でご利用いただけますが、β版のため不具合が発生する場合や、予告なくサービスを終了する可能性があります
アプリの使用方法は、以下のマニュアルをご覧ください。
Sマルチ管理導入支援アプリ簡易マニュアル(v1.0)
用語の解説
- シールディング・マルチ栽培(NARO S.マルチ)
- 農研機構が開発したカンキツの高品質果実安定生産技術で、排水設計した園地において、専用のNARO S.シートを園内に埋設したうえで地表面をマルチシートで覆う技術です。従来のシートマルチ栽培の問題とされている雨水の根域への流入や、マルチ外への根の伸長を防ぐことで、樹に確実な乾燥ストレスを付与し、高品質果実の安定生産に貢献します。[概要に戻る]
- 乾燥ストレス
- 土壌が乾燥し、樹が水分不足の状態になることを表します。温州ミカンなどのカンキツ類は、夏から秋にかけて適度な乾燥ストレスが付与されると、細胞内の浸透圧を高める働き(浸透圧調整)により果汁内の糖濃度が高くなります。加えて、果実が小玉化することによる果汁内成分の濃縮もあり、糖度の高い果実が生産されると考えられています。[概要に戻る]
- AI灌水適期判断機能
- AI灌水適期判断機能は、スマートフォン(iPhoneに限る)で撮影した温州ミカンの果実画像から果実径を推定し、同一果実の経時変化から一日あたりの肥大速度(日肥大量)を自動で算出し、そのデータをもとに灌水の要否の判断をサポートする機能です。乾燥ストレス程度と果実の肥大量との間には相関があり、高品質果実生産に適した日肥大量は0.3mm程度です。従来はノギスで測定し日肥大量を手動で計算する必要がありましたが、本機能はこれらを自動化することで、灌水判断に係る手間と時間を短縮することができます。加えて、データを共有できる機能を搭載していることから、生産者同士や指導員との情報共有も容易に行うことができます。[概要に戻る]
- webアプリケーション(webアプリ)
- スマートフォンなどの端末にダウンロードする必要がなく、ネットワークを経由してwebブラウザ(例:Safari、Google Chromeなど)上で動作するアプリケーションを指します。[概要に戻る]
- QRコード
- QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。[概要に戻る]
関連情報
予算:運営費交付金、農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術支援センター「戦略的スマート農業技術等の開発・改良」JPJ011397 アプリ開発協力:株式会社ヘッドウォータース


