畜産研究部門

写真で見る繁殖技術

牛の発情

牛は季節には関係なく(周年性)、21日間隔で発情を繰り返します。発情は雄を受け入れる期間で、この時期に交配が行われ、受胎すると発情が停止します。 人工授精ではこの発情を管理者が的確に発見し、種付けを行う必要があります。

1)雄子牛の追従、乗駕

雄子牛の追従、乗駕

発情期には発情徴候とよばれる発情に特有な行動や変化を示します。

1)発情を最初に発見(?)するのは牛群中の雄子牛です。発情の1~2日前くらいからある程度の月齢の雄子牛は雌牛に追従したり、乗駕したりします。雄子牛は80日齢以前からこの様な行動を行います。

2)行動の変化

行動の変化

2)発情牛は行動に落ち着きがなくなったり、食欲が低下しますが、牛群全体が休息しているときも起立したり、横臥中の雌牛を突くなどの行動がみられます。例えば非発情牛は1時間あたり50m 歩行しますが、発情牛は80m歩行します。歩行距離を自動的に測定して、発情牛を検出することも可能になっています。また自ら他の牛に乗駕することも多くみられます。

3)乗駕許容

乗駕許容

3)最も明白な発情徴候は他の牛に乗られたとき、許容して動かないことです。乗駕許容、スタンデング発情といわれます。「68」が発情牛です。放牧地で調査した4頭の平均ですが、発情牛は1回の発情時(約12時間)に他の牛から72回乗駕され、他の牛に39回乗駕しています。

短角種の乗駕許容

短角種の乗駕許容

放飼場でみられた短角種の発情行動。

4)粘液の流出

粘液の流出

4)発情牛は外陰部から発情粘液を流出します。透明感のある水様性の粘液が特徴的です。

5)行動の変化

行動の変化

5)牛群の中に発情牛がいるときは、特別な理由がないのに、数頭の牛が一列に並ぶことがあります。牛群の観察でこの様に1列に牛が並んでいる場合は発情牛がいる可能性があります。

6-1)乗駕の前駆的な行動

乗駕の前駆的な行動

6ー1)発情牛は横に並列に並んだり、直交するように並んだりします。また頭に向かって乗駕するような行動をすることもあります。

6-2)直行

直行

6-2直行するように並びます。

6-3)乗ろうとする行動

乗ろうとする行動

6-3)突然乗ろうとして、相手の頭部に向かって乗駕行動を示しました。

7)雌牛同士の争い

雌牛同士の争い

7)特別の理由がなく頭突きをしたりします。「61」が発情牛でした。

8-1、2、3)顎休め

顎休め

8-1、2、3)発情牛は雄牛のように、相手の後躯に顎を載せ休む姿勢(顎休み)を取ったり、馬で典型的にみられるフレーメンとよばれる上唇を開く動作あるいは相手の牛の臭いを嗅ぐ動作を示します。

8-2)フレーメン

フレーメン

8-2上唇を開く動作あるいは相手の牛の臭いを嗅ぐ動作です。

8-3)フレーメン

フレーメン

8-3フレーメン

9-1、2)機械的な発情発見法ーチンボール法

チンボール法

9-1、2)発情は経験豊かな管理者によって簡単に発見できますが、雄牛に発見させる方法もあります。チンボール(顎ボール)法は去勢牛あるいは交尾ができないように手術をした雄牛の顎の下にインクを入れた器具を装着し、この牛が発情牛に乗駕した時に、インクが出て相手牛にマークが付くようになっています。

装着牛

装着牛

9-2)乗駕検出器具

乗駕検出器具

9-2)ヒートマウントデイテクターは雌牛の尻に貼り付けておいて発情を知らせる器具です。許容すると後躯に付けたマーカーから赤いインクが出て、発情がわかります。

10-1)排卵後出血

排卵後出血

10-1)牛特に未経産の牛に特徴的なこととして、発情後2~3日に外陰部から血液混じりの粘液を流出させたり、外陰部付近に血液の塊が付着していたりあるいは乾燥した血液様粘液が付着していることがあります。これが発情後出血で、「牛の月経」などとよぶ農家もあります。これは排卵後にみられる現象で、発情時のホルモンの変化の結果おこるものです。種付けの有無に関わらず見られ、黄体が退行するときに起こる女性の出血とは全く別の機構で起こります。

10-2)排卵後の子宮

排卵後の子宮

10-2)排卵後採取した子宮で、子宮外面の膜からも出血の跡がわかります。

10-3)排卵後の子宮の内部

排卵後の子宮の内部

10-3)子宮を切開しました。子宮内部に出血の跡がわかります。発情期に発情ホルモンの作用によって急速に発展した子宮内膜の毛細血管組織が、排卵後の発情ホルモンの低下により、一部壊されることによるとされている。

11)横取り法による精液採取

横取り法による精液採取

11)雄牛から精液を採取しています。実際の牛や擬牝台に雄牛を乗駕させ、人工膣(図の黒い筒状の器具)に射精させます。この様にして採取した精液を100倍くらいに希釈し、細いストローに分注し、液体窒素中で凍結保存しておき、必要なときに融解して用います。1頭の雄牛は数万頭の雌牛に種付けが可能になります。

例を挙げると、種雄牛「北国7の8」は22万頭以上の子牛を生産しています。

一部未だ未完成です。材料の一部は元山口大学農学部教授、菅徹行博士の提供によるものです。

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