牛は品種によって異なりますが、種付け後、乳牛で280日、黒毛和種では285日位で分娩します。分娩予定日は簡単に求められます。 種付けをした月日の月からマイナス3、同じくその日に6あるいは10日を加えた日が分娩予定になります。4月10日に種付けをすれば、1月20日が黒毛和 種の分娩予定日になります。
分娩の前兆
妊娠末期には腹部の膨大、外陰部の腫脹、弛緩、乳房の発育、腫脹などがみられます。 一般に分娩は陣痛に始まる開口期、子宮口の全開から出産に至る娩出期、出産後胎盤などの後産が排出される後産期に分けられます。
黒毛和種でははっきりとわかる陣痛の開始から娩出まで1時間から2時間(平均で1時間40分)、娩出から後産排出まで2時間から4時間(平均で)3時間)を要するのが一般的です。
1)分娩が近づくと、骨盤の靱帯がゆるむために、尾の付け根が落ち込んで、きます。食欲が変化したり、急速に乳房が張ってきますし、粘液の流動性なども変化します。
血液を入れた粘液と外陰部腫脹
陣痛とともに、胎盤の剥離に伴う軽度の出血が見られることもあります。
陣痛、胎膜の露出
1-1)陣痛とともに分娩が始まると、やがて胎膜が外陰部から露出してきます。 露出前に子宮による圧力によって膣内で破裂(破水)することもあります。
胎膜
破水
2)胎膜が破れ(第1破水)、胎膜液が潤滑剤の役目を果たし、また液の流出により羊膜に包まれた胎子が子宮頚管を通過しやすくなります。第1破水の時の胎液は褐色で、尿のように粘稠性がありません。
足胞
3-1)ついで羊膜に包まれた胎子が外陰部に出てきます。牛の分娩では前肢が最初に出てくるので、足胞とよびます。
足胞
3-2)足胞の上から胎子の蹄などが見え、脚の向きや大きさなどで分娩が正常に進行するかあるいは問題が生じるかなどの判断が容易にできるようになります。
第2破水
4-1)さらに強力な陣痛によって胎子全体が押し出されますと、この胎胞も破れ(第2破水)、直接足や頭部あるいは鼻先が直接露出してきます。第2破水の胎液は羊膜嚢の液で、やや粘稠性に冨み、灰白色をしています。
第2破水
4-2)第2破水をしてから娩出がうまく行われないときは、速やかに胎子の脚を牽引するなどの、分娩介助が必要になります。
娩出
5-1)頭部が外陰部外に出ました。
娩出
5-2)頭部が外陰部外に出ました。
娩出
6-1)頭部が出れば、 すぐに残りの体幹部や後肢部は娩出されます。
娩出
6-2)頭部が出れば、 すぐに残りの体幹部や後肢部は娩出されます。 場合によっては子牛に着いている胎膜や粘液などを取り除いたり、子牛の子牛を持って逆さにして気管などに詰まっているものを出してやる必要があります。
母牛の愛情
7)娩出した子牛を母牛は舐めて、起立させようとします。子牛は1時間ほどで母牛の乳を飲みはじめます。この時に母牛が泌乳する乳は初乳とよばれ、人の 飲用には用いられませんが、子牛にとっては母牛から病気などに対する免疫をもらうために大変重要な役目を果たしています。
子牛の起立
この牛は黒毛和種ですが、通常より遅く、娩出2時間で哺乳を始めました。
後産
8-1)子宮から胎盤が剥離、反転してきました。野外などで分娩すると母牛は後産を食べてしまいます。全体の重量は和牛では3~5Kgあります。
後産
8-2)子宮内に残る胎盤、胎膜などが排出されます。血液に富む宮阜(胎盤節)が見えます。宮阜総数は70~120個あります。
牛の分娩
9-1 陣痛のために横臥した牛。乳首から漏乳している。
牛の分娩
9-2 後産期の牛。床に漏乳した牛乳がみえる。この後、数時間で後産完了。
一部未だ未完成です。これらの写真の一部は元山口大学農学部教授、菅 徹行博士の提供です。
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