農村工学研究部門

農村工学研究部門メールマガジン

メールマガジン第12号(2011年3月号)

東北地方太平洋沖地震で被害にあわれた皆様には心よりお見舞い申し上げます。当所の対応状況については、臨時増刊号でお知らせ致します。

目次

1)トピックス

■新燃岳噴火 ‐被災現場に職員を派遣‐

宮崎と鹿児島県境の霧島連山・新燃岳が、1月26日に小規模に噴火し、27日には52年ぶりに爆発的に噴火。その後も噴火活動が続き、両県内で、降灰により農作物や農業用施設に被害が発生しています。

農林水産省から当所に災害対策の支援要請があり、2月25日~26日に毛利施設資源部長を現地に派遣。同省農村振興局、九州農政局、都城盆地農業水利事業所、宮崎県都城市と合同で調査しました。ヘリコプターによる上空からの広域調査、降灰範囲及び降灰状況の確認、地上調査による農業用基幹施設、農地への降灰状況の確認などを行い、今後の対策を検討しました。

企画管理部 防災研究調整役 木下勝義

(関連URL)

■研究推進体制の再編 ‐4月から農工研が変わります‐

今年3月で第2期5年間の中期目標期間が終了し、4月より第3期の中期目標期間が始まります。農工研は、これまでの研究の蓄積を元に、水田の高度利用、水利施設のストックマネジメント、農地・農業用水の保全、自然エネルギー、防災・減災、地球温暖化対策、バイオマス資源循環という研究課題を主体に取り組みます。

これらに機動的に対応できるよう、所内の研究推進体制を再編します。同時に、行政や関係機関との連携方法を見直し、逼迫する国家財政事情を踏まえて、急ぐべき研究開発課題への重点化も進めて参ります。新たなスタートを切るに当たり、皆様の益々のご指導・ご協力をお願い申し上げます。

企画管理部長 小泉健

(組織再編図)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm12_01-02.pdf

■農工研メルマガ会員1、000名を突破

おかげさまで、2月末で会員1、000名を越えました。昨年4月に創刊以降、会員皆様の投稿に支えられて1年が過ぎました。会員の登録状況を整理しましたのでご覧下さい。

若い技術者や農村工学分野を学ぶ学生にも読んでいただけるように分かりやすさを心がけて編集しています。農工研と会員皆様との双方向のコミュニケーションツールになるよう、引き続きご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。

メルマガ編集委員会

(関連資料)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm12_01-03.pdf

2)技術なんでも相談

■冬水田んぼの水管理について教えて下さい

越冬のために飛来してくる水鳥を呼び込み、付加価値の高い米づくりを目指して、冬期湛水(たんすい)に取り組みたいと考えています。そのための用水を他の地区ではどのように確保し、どのように維持管理しているのでしょうか。

F県匿名希望

【お答えします】

農村環境部 環境評価研究室 主任研究員 嶺田拓也

2000年以降、冬期湛水の取組は全国的に増加傾向にあります。その目的は、水鳥の保全や生態系の再生といった環境配慮、雑草抑制効果による営農の省力化、付加価値米の生産といった経営改善など多様です。冬期湛水水田は、江戸時代に生まれた古くて新しい農業技術です。これが現代において再評価されようとしています。

このような中で、農林水産省は環境保全型農業直接支援対策を制度化しました。冬期湛水管理も支援の対象に含まれたので、今後ともこの取組は拡大すると思われます。ただし、科学的に解明されていない事象が多くあります。その中で私たちが行った調査研究の一部をご紹介します。

(関連資料)

3)水土里のささやき

■農工研メルマガに期待します

松戸市 太田弘毅 様より

会員1、000名突破おめでとうございます。私は、農工研と農村工学研究分野の現在を知る有力な方法としてメルマガを読んでいます。参考文献をワンクリックでアクセスできるのが最大の魅力です。自分のパソコンの中に、農工研図書館があるようなものです。情報洪水の現在、情報は捨てられながら取得されます。捨てることが先行します。つまり、見出しが鍵です。一息で読める長さは、約25文字程度です。長すぎると逆に意味が取りづらくなり、その時点で情報は捨てられます。文章は切るほどに引き締まり、意味が取り
やすくなるのでご配慮お願いします。

メルマガをとおして、農工研のホームドクター機能、技術移転機能、データバンク機能が今後とも十分に発揮されますよう祈っています。

4)最新の「農工研ニュース」より

■温室の換気設計手法 ‐夏場の温室環境を改善する‐

温室栽培には、建設費用や環境制御装置の運転費用が必要です。露地栽培に比べて経費がかかるものの、天候や季節に左右されないので高収益が期待されます。ただし、夏場に温室内は高温となり、作物栽培が困難になります。そのため、夏場の高温抑制が安定した経営の鍵になります。

温室内は気温や気流のムラをつくらないように、換気窓を適切に開閉する必要があります。ここで数値流体力学手法(CFD)を用いると、コンピューターで気温や気流分布を予測することができます。

このようなCFDの計算結果の精度を保つには、実際の温室での測定や縮尺模型を使った風洞実験による検証が欠かせません。夏季に多連棟温室で自然換気をしたときの、室内の気温と気流分布の変化を動画でご覧下さい。

農村総合研究部
農業施設工学研究チーム 主任研究員 石井雅久

(関連資料)

5)農村工学研究所の動き

■平成22年度農村工学試験研究推進会議の開催

3月3日に、標記の会議を当所の防災研究棟で開催しました。会議には、農水省の農林水産技術会議事務局と農村振興局、農研機構内外の研究機関、農村工学分野に関わる関係団体から21名の方々に出席いただきました。

会議では、当所の1年間の研究活動を振り返り、研究成果の受け渡し状況、行政との連携状況、研究の分担関係や協力関係などについて確認しました。頂戴した意見や要望は、この4月に再編される農工研の新しい研究組織の運営に活かして参ります。

企画管理部 研究調整役 奥島修二

(関連資料:写真)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm12_05-01.pdf

■平成22年度農村工学研究所研究会の開催

3月9日~10日に、つくば農林ホールにおいて、標記の研究会を開催し、219名の方々に参加いただきました。この研究会は、当所の研究成果やトピックスを話題にして、新たな研究展開を考える場となるよう毎年度末に開催しています。

本年度は、東京大学名誉教授の田中忠次先生に、「今後の農村工学研究への期待」と題する基調講演をお願いしました。引き続いて、「ストックマネジメント」、「防災」、「地域資源の保全」という3つの分野で研究会を開催しました。

農工研は、これからもこうした研究会を通じて、幅広い分野の関係者との意見・情報交換を心がけながら、研究成果のPRに努めて参ります。

企画管理部 業務推進室長 小川茂男

6)ズームイン

■キャベツによる町おこしをお手伝い ‐岩手県岩手町‐

岩手県北部を管轄する新岩手農協では、行政等と連携し、耕作放棄地等を活用したキャベツ『いわて春みどり』の生産とブランド化に取り組んでいます。加えて、耕畜連携による循環型農業の推進、化学肥料を減らし安全・安心な野菜生産という一連の活動が評価され、第39回日本農業賞(集団組織の部優秀賞)を受賞しました。

この度、農工研メルマガ第4号(平成22年7月)のズームインでお知らせした「キャベツ復興録」が、私と地元関係者との協働で完成しました。キャベツによる町おこしに弾みがつきそうです。

この管内の沿岸部も、東北地方太平洋沖地震によって甚大な被害を蒙りました。各機関では、編さん事業を通して培った協力関係を活かし、産地振興策を強化して、被災地域の支援につなげようとしています。私も引き続き応援していきます。

農村総合研究部
都市農村交流研究チーム 特別研究員 清水克志

(関連URL)

7)こんにちは農業・農村

■手取川扇状地の地下水はどこからやってくるのか?

石川県白山市と岐阜県白川村にまたがる標高2、702mの白山から流れ出る水は、石川県最大の河川である手取川の水源となっています。手取川は、県が誇る穀倉地帯である加賀平野の水田を潤し、また、伏流水や地下水となり、地域の生活を支えています。

平成20年5月に、白山市から美川地域の「白山美川伏流水群」が、環境省の「平成の名水百選」に選定されました。この地区では、県の天然記念物で絶滅危惧種指定の「トミヨ」や生活水の保全活動が盛んに行われています。

このような背景から、手取川流域座談会「美川の水を知ろう」が3月6日に、石川県白山市で開催されました。私は講師として、手取川扇状地でなぜ湧水が多いのか、扇状地の地下水はどこからやってくるのかなどについて、私の調査研究を基に解説しました。参加された方々の関心はとても高く、この熱意こそが名水の源泉と思いました。

農村総合研究部
地球温暖化対策研究チーム 主任研究員 土原健雄

(関連資料)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm12_07-01.pdf

【編集発行】

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(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
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