西日本農業研究センター

所長室だより -縦糸をしっかりする-

新年になってつくばでの会議に出席するため、つくばと福山の間を何度か往復した。その間に濃尾平野の小麦の色はだんだん緑が濃くなってきた。

今年度から農研機構は、複数の研究所を横断して大課題、その下に中課題を構成するプログラム・プロジェクト制を開始した。12月から2月の課題に関する評価会議で内部での検討がほぼ終了し、3月の末に開かれる農研機構評価委員会でこの新しいプログラム・プロジェクト制でのもとでの研究成果の最終評価がなされるところである。

さて、織物を織るときは、まず縦糸をしっかりと固定して準備しなければ始まらないという。それを基本として織り上げていくという。つまり、縦糸は織物の基本とされている。

農研機構の2011年度(平成23年度)から実施すべき中期計画を一枚の織物にたとえてみれば、大課題は太い横糸で、中課題は中くらいの横糸ということになろうか。そうすると、縦糸は、研究所、あるいは一人一人の研究者ということになろう。

農業をめぐる問題は多岐に渡り、研究課題の数は減ることはなく、昨年から大震災や原発事故に対応する研究も加わり、横糸の数は増えていると言ってよい。ますます農研機構の織るべき織物は大きくなっている。しかし、考えてみると、織物の基本である縦糸がしっかりしていないと立派なものは織れないし、場合によっては途中でほつれて穴があいてしまうこともあろう。

縦糸をしっかりすることが、中期計画を成功させる鍵である。そのためには、まずは若手の研究者の採用だ。なかなか思うようにならないのが現実であるが、ぜひ若い研究者を採用して縦糸を補充したいものだ。そして、もう一つは、研究者の資質を上げて、一本一本の縦糸を太くすることだろう。研究者はしっかりとした太い縦糸になれるよう技量を磨いてほしいものだ。研究所としても研究者の資質向上を重要な役割の一つと考えて、いろいろと工夫していきたい。

平成24年3月
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
近畿中国四国農業研究センター所長
長峰司