西日本農業研究センター

所長室だより -Publish or perish について-

小麦の収穫今年の5月と6月は天候に恵まれ、小麦の生育は良く、育種材料の調査や収穫が順調に進んだ。また、水稲の実験材料の移植も終わり、あとは野上がりを迎えるばかりとなっている。農繁期が過ぎて、研究職員はこれから論文を書こうという気持ちになって来ていることであろう。

表題の Publish or perish を日本語で少しオーバーに訳せば、“論文を書け、書かないなら、研究員を辞めちまえ”という意味である。 Publish or perish は韻を踏んでおり、覚えやすい。この言葉に出会ったのは、今から30年以上も前である。当時中国農業試験場の作物部からアメリカのジョージア大学に科学技術庁の在外研究で留学していた先輩研究者が時々航空便で送ってきた「ジョージア便り」(通信名はうろ覚え)に載っていたものである。

先輩研究者は、中国農業試験場の私たちに、「アメリカでは研究成果をきちんと論文にまとめている。君たちも見習ったら。」という気持ちをこめて紹介されたのだと思う。当時20歳代後半だった私は、通信を読んで、アメリカの研究員はそういう気持ちで研究をしているのかと初めて知って、見習わなくてはいけないなと思った次第である。

さて、今の私たち研究職員は Publish をどのくらい実践しているだろうか。研究の節目、節目に論文としてまとめているだろうか。30年前に比べると今は論文を書くことが研究職員の責務として強く求められている。研究職員としての責務を自覚して、研究成果を着実に世の中に公表する必要がある。論文を書かないと、 Perish されるというような意識を持って研究にあたりたいものだ。

最後に付け加えると、先輩研究者は在外研究が終わって中国農業試験場に戻られてから同僚の研究員と一緒になって相当数の論文を公表された。きっとアメリカでの経験が役立っているに違いない。

平成24年7月
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
近畿中国四国農業研究センター所長
長峰司